大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
方言スタンプにおけるモダリティ |
戻る |
私:ラインスタンプクリエータなる職業が少なからずいらっしゃるご時世だね。 君:何と言ってもイラスト力という事ね。 私:うん、それに昨今の方言ブーム。方言萌え、方言コスプレ、ネオ方言、新方言、等々。学会に所属していないし専門書も熟読してはいないけれど、ラインスタンプの語彙に注目する国語学者はこれまた少なからずいらっしゃるだろうね。スタンプはネット公開情報なので、全国の方言を知るのにとても役に立つ。 君:昔の方言学と言えば、古老への聞き取りというイメージなのにねえ。ほほほ 私:方言女子という言葉もあって方言は寧ろ若者文化と言ってもいい。 君:ライククリエータ様がたは自分のネイティブの方言で無くても新規開拓できそうね。 私:そうなんだよ。各地の方言があるが、ちょいと調べれば、なるほどこういう意味か、という事で文字を書いてイラストを描いてスタンプの出来上がり、という事だからね。 君:特定の地域の方言スタンプのセット販売とは限らないわね。 私:そうだね。僕は全国の方言が散りばめられた商品があれは購入したいと考えている。ところで水尻自子(みずしりよりこ)さんを知っているかい。 君:いえ、存じ上げないわ。 私:映像クリエータ。国際的に活躍していらっしゃる。飛騨方言の動画もある。彼女のテーマは全国の方言だ。ここ・はんちくたい 君:水尻自子さんはラインスタンプは作成なさらないのね。 私:まあね。本日の話題に移ろう。 君:モダリティとはラインスタンプの文字情報の解析という事ね。 私:その通り。イラストの出来については、僕には語る資格がない。僕は芸術家じゃない。 君:では国語学・モダリティのお話をどうぞ。 私:ラインスタンプなのでその土地で人気のある言葉、つまり方言の言い回し、つまりは多くは俚言、をラインスタンプにする。ここまでは良し。 君:ただしそれだけではラインスタンプたりえない、とおっしゃりたいのね。 私:その通り。例えば僕の生まれ育った岐阜県高山市、つまり飛騨地方には、「ゆきまたじ」という俚言がある。雪かきの事。人気の言葉だ。 君:単に雪かきをしてるイラストでダメという事なのね。 私:その通り。「ゆきまたじ」のモダリティとは「ああ、面倒くさい、やりたくない、いやになってしまう」と言う事なんだ。 君:つまりは。 私:つまりは「ゆきまたじ」スタンプには苦悩にあえぐ人の表情が必須という事だよ。 君:その通りね。「ゆきまたじ」が好きな人なんて絶対にいないわね。 私:そのようなラインスタンプを作成する事も可能だろうが、となると「嫌な雪かき」という情報発信にしか使えない。 君:なるほど。「ああ、面倒くさい、やりたくない、いやになってしまう」と言うスタンプがあれば「ゆきまたじ」という一行文字を発信の後に、立て続けに「ああ、面倒くさい、やりたくない、いやになってしまう」のスタンプを発信すれば、メッセージは正確に伝わるわね。「ゆきまたじ」の代わりに他の文字情報を発信したのちにスタンプ発信してもいいのね。幾らでも応用が利くわね。 私:その通り。スタンプのイラスト情報が発信すべきはモダリティだ。それ以上でも、それ以下でもない。 君:つまりはモダリティって感情表現という事ね。 私:ほとんどその通り、と言っておこう。正しくは別物。もう少し国語学的なお話にしよう 君:とは。 私:ラインでもなんでもそうだが、文というのは「叙述内容・言表事象・命題」と「モダリティ・言表態度・陳述」から成り立っている。 君:「叙述内容・言表事象・命題」は「雪かき」で、「モダリティ・言表態度・陳述」は「めんどうだ・やりたくない」ね。 私:その通り。モダリティの定義というものがあって、★現在が発話時点、つまり基準時が現在である事、★聞き手を必要とする事、★話し手の心の在り方、つまりは気持ちなどを示す事、以上の三要件を満たすものが言葉のモダリティだ。実は感情の表現はモダリティの一部分だ。 君:ラインでのやりとりは正にモダリティのやり取りなのよね。 私:目は口ほどにものを言い、という言葉がある。気持ちを正確に表しているスタンプならば、人はお互いをより深く理解できるようになる。 君:本気の相手には、ズバリの文字表現はやめてイラストで感情を伝えたほうがいいわね。でも婉曲表現オンパレードの和歌の世界と違って、ラインはストレートな世界ね。 私:その通りだね。和歌改め君も・・まあ罪な人、いや、えい、これなら・・という事で、そろそろ結論にしよう。 君:豊臣秀吉が濃尾平野で一言でお願いね。 私:望むところ。結論だが、ラインスタンプに必要なのはひとつのセットのモダリティ表現。セットになっていれば長らく使う事ができる。 君:セットとは。 私:★助言(〜したらどう)★勧誘(お願いします)★意志(つもりだ)★希望(してほしい)★状況判断(〜のはずだ)★確認(そうかい)★判断放棄(いやちがう)★断言★伝聞(〜らしい)あたりが代表的なモダリティ。 君:代表的と言うだけに一つ欠けても購買する気持ちになれないのね。 私:イラストが面白いだけでも、俚言のイラストがあるだけでもだめ。スタンプに必要なのはワンセットのモダリティ。 君:モダリティの世界は確かに感情表現、つまりはシク活用形容詞の世界とは言い難いわね。 私:感情とは喜怒哀楽の事だから、モダリティの世界とは違うね。まずは相手にモダリティの部分情報を方言の形、つまりは文字の形で情報を与え、しかる後にモダリティのスタンプを発信すればよい。つまりはラインの世界は「命題あるいは感情+モダリティ」のやり取りという事。内容が明らかな場合は、敢えて何かを省略するという事で、より効果的な表現になる事もある。 君:人と同じスタンプはいや、という感情が誰にもあるからラインクリエータさん達のお仕事があるのよね。 私:Right ! You said it !「モダリティ+感情」を意識して制作していらっしゃる方の作品は、やはり違うね。 君:ほほほ、あなたの本音ははモダリティはさておき、スタンプの文字情報、つまりは語彙、つまりはクリエータさんたちがどんな語彙を重要と考えているか、という事に最大の関心がおありなのよね。 |
ページ先頭に戻る |