大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 音声学

条件異音 conditional allophone

戻る

私:今日の話題は異音の種類。条件異音と自由異音。異音とは、音の区別の最小単位だけれど、その音の違いが意味的な違いになるのが条件異音。日本語に於いてカメ亀・サメ鮫、この二語は異音の違い(/k/ vs /s/)であるのみならず、意味も区別されるから、このように日本語に於いて /k/ 、 /s/ は条件異音という。日本語の異音のほとんどが条件異音。つまり、日本語に於いては/k/であるようなないような、はたまた/s/であるようなないような、ましてや/k/ 、 /s/の中間的な音の異音などというものは存在しない。
君:物質で言えば異音は原子、音韻は分子といったところかしらね。
私:その例えは厳密に言えば正しくないと思う。条件異音という限りにおいて原子の例えは正しいが、日本人は /l/ /r/ を区別しないし、アラブ人は /p/ /b/ を区別しない。このような異音は日本語にとって、あるいはアラブ語にとって自由異音という。ところがこれらは英語にとっては条件異音であって自由異音ではない。
君:つまりは各国毎に、その言語の原子周期表が異なるという意味ね。
私:その通り。厳密には、微妙に異なるという事だね。逆に言えば世界の言語の異音は条件異音が大半であり、自由異音は特殊。
君:条件異音は無意識の世界、とよく言われるわね。
私:そう。日本語の/ン/の音は四種類あるが、皆が無意識に、つまり間違えずに使っている。ただし幼児語では間違いが目立つが、成長と共に間違いはなくなり、やがて間違わずに無意識に使えるようになる。私の孫がまだ舌足らずで/アノサー/が言えず/アノチャー/と言っている。彼にとっては/s/,/tj/は自由異音というわけだ。
君:四つ仮名弁の問題も条件異音ととらえるか自由異音ととらえるか、日本各地の方言で微妙に異なるという意味ね。
私:うん。ただし四つ仮名弁の場合は自由異音の地方が圧倒的に多い。つまり日本のほとんどの地域では四つ仮名を区別しない。大切なのは耳。
君:いいえ、それは違うわよ。耳は単なるAD変換器。大切なのは聴覚の脳ね。 ほほほ

ページ先頭に戻る