大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 音声学

音素 phoneme

戻る

私:今日は音素のお話。言語学における音声の最小単位。言語学といえば各国語に共通の学問という事になるが、音素に限っては、各国語毎の音素の体系がある。英米人は /l/と/r/ を区別するが、日本語では区別しないとか。また音素は一つの言語においても時代の変遷というものがある。
君:それはいいから、音素とはそもそも何なの?イロハ48文字でない事くらいはわかるけど。
私:子音・母音レベルで対立する音韻論的な最小単位の事。例えば。か科・さ差、/k/・/s/ の子音が対立し異なる音韻になるので、子音は全て音素。拗音、撥音、促音なども音素。「あいうえお」これも音韻的にも音声学的にも五つは対立するので母音は全て音素。母音の数は日本各地の方言によっても異なる。最多は尾張方言で八個。各国語によっても母音の数は異なる。これらの母音全てが、それぞれ独立した音素。
君:馬鹿々々しい。音素は母音と子音に二大別される。音素とは母音や子音の事、と要約できるわね。
私:うん。ヒトが話す言において、母音にも、子音にも、これ以上は分けられないという特質がある。そして、音素についてもう一つ、大切な特質というものがある。
君:IPA表記できて各国語に共通の表記が可能という事ね。
私:うん、確かにその事なんだが、結論を言おう。要するに、聞き言葉の世界の事であって、話し言葉の世界の事ではない、という事。
君:えっ?具体的にお願いね。
私:日本人が英語を聞く時、その耳の力は英米人と同じでしょ。つまりは音素の聞き分けに人種差はない。でも日本人が幾ら話す英語の音素分析ができるからと言って、そのように発音はできません。日本人は日本語の音韻体系に従って、自分が発音できる音素で日本人らしい英語を話すという事であって、話し言葉の場合、言語間の差が如実に表れ、英米人が話しにくい日本語の音素パターンも存在するので、要はお互い様という事。
君:英米人は /l/と/r/ を区別し、それが音韻的には意味の差につながるけれど、日本人は両音素をお構いなしに /l/ で代用するのね。
私:よく知られた別の例としては、アラブ語には /p/ がなく、 /b/ になってしまう。ペンシルではなくベンシル。
君:確かに似た音よね。発音を笑う事は教養とは言わないわ。各国語の音素の体系、ひいては音韻の体系を正確に理解して、各国語を正確に聞き、正しく理解する事が大切ね。 ほほほ

ページ先頭に戻る