あやふやな事は書くまいと思っても、あれこれ推理が働くと どうしても書きたくなってしまって、申し訳ございません。 ところで複数の古い飛騨方言の資料に、あったん=復讐、という記載がありまず。 ただ今ネット検索した所、ヒットゼロでした。死語と言う事でしょうね。 筆者は戦後の生まれですが、一度も聞いた事がありません。 資料としては土田吉左衛門・著の飛騨のことば、が白眉でしょう。 あったん 復讐。あだ・仇。 あったんがえし 復讐。しかえし。あったん、に同じ。 あったんがえす。 復讐する。しかえしする。 あったんかやす。 復讐する。しかえしする。 以上から明らかですね。あったん、は飛騨方言で、あだ、の事であり、 明治あるいは戦前あたりまでは使われていたのでしょうね。 そして旺文社古語辞典の記載は、 あた・仇=敵。かたき。当る、の語幹か。近世中世以降は、あだ。 つまりは、飛騨方言・あったん、の音韻は中古の時代の日本語の音韻を残した言葉だったのです。 あったん、の語源は、あた=あたる、にある事もわかってしまいました。 さて佐七節ですが、中央では、あた>あだ、の音韻変化がありました。 飛騨方言においては、あた>あったん、の音韻変化だったのでしょう。 あた、が、あだ、になったのは、あだ・徒、の言葉につられて、という事でしょうね、ふふふ。 つまりは意味の混同です。 飛騨方言で、あた、が、あったん、になったのは、語気を強めるだったに 違いありません。よほど憎憎しいという気持ちがあったんやろ、ふふふ。 あったんがえし、あったんかやす、についてはどうでしょうか。 これぞ、方言学で言う所の、誤れる回帰。 リベンジ、のリ、と同じ意味、もともとが、返す、という意味があるので、 二重に、〜かえし、などと言う必要はないのです。 これもおそらくは、恩を仇でかえす、というような字句からの 連想で発明されてしまった言葉なのでしょうね。 アクセントですが、あだ、は二拍尾高ですから、あったん、も、た、に アクセントの核がアッタンでしょう。
あったん 復讐。あだ・仇。 あったんがえし 復讐。しかえし。あったん、に同じ。 あったんがえす。 復讐する。しかえしする。 あったんかやす。 復讐する。しかえしする。
あた・仇=敵。かたき。当る、の語幹か。近世中世以降は、あだ。