各種方言資料によりますと、岐阜県は鼻濁音が存在する地域とされ、
実際、飛騨方言においても鼻濁音は用いられます。
尚、鼻濁音というのは語の中にある、がぎぐげご、の音のうち鼻に抜けて出す音の事です。
例えば、戦後という言葉の、ご、がそれに相当します。
語の最初に出る言葉、例えば学校という言葉の、が、の音、が鼻濁音になる事はありません。
ただし、語の中にある言葉でも千五、という数字の、ご、の音は鼻濁音にならないという事もあり
逆は必ずしも真ならずです。
自分が発している言葉が鼻濁音かどうかは、簡単な実験で判定できます。
鼻をつまんで発声できれば鼻濁音ではなく、できなければ鼻濁音です。
飛騨方言の訛りとして、か行の濁音化があると思いますが、それが鼻濁音になるかどうか、
という事で、不詳・佐七目が自身の鼻をつまみひたすら内省の実験を試みました。
鼻濁音になれば○、ならねば×で示します。
動詞
ほかる−>ほ×がる
値切る−>ね○ぎる
いきる−>い×ぎる
避ける−>さ×げる
下げる−>さ○げる
広げる−>ひろ○げる
書く−>か×ぐ
嗅ぐ−>か○ぐ
助動詞、助詞、他
高かかった−>た×が×がった
そのようらしかった−>そのようらし×がった
そうなのか?−>そうなの×が?
形容詞
あかい橋−>あ×がかろ,あ×がかっ,あ×がく,あ×がい,あ×がい,あ×がけりゃ
たかい山−>た×がかろ,た×がかっ,た×がく,た×がい,た×がい,た×がけりゃ
ながい帯−>な○がかろ,な○がかっ,な○がく,な○がい,な○がい,な○がけりゃ
にがい薬−>に○がかろ,に○がかっ,に○がく,に○がい,に○がい,に○がけりゃ
名詞
飛騨たかやま市−>た×がやま
下呂市小坂町−>おさ×が
東京−>とうきょう、濁音化せず
さかや×−>さがや
おね○がい じゃ○がいも
(海岸)かい○がん
会館−>かいかん、濁音化せず
上記の例から以下の結論がでました。
飛騨方言では相当する共通語で語中鼻濁音になるべき箇所は全て鼻濁音になる
活用品詞はほとんど濁音化するが、決して鼻濁音にならず、共通語の鼻濁音活用と明瞭に区別できる( 例 さげる )。
一部の名詞、固有名詞においてすら濁音化する事があるが、決して鼻濁音にはならない。
名詞はむしろ濁音化しない例が多いが、濁音としたほうが飛騨方言らしい単語も存在する。
もっと簡単に一言でまとめると、鼻濁音に関しては飛騨方言と共通語の差は全くありません。
けれど濁音化する単語も多いけれど、じゃなくて、×げど濁音化する単語も多い×げど。