木戸脇周三、懐かしい飛騨の言葉、サンケイ自費出版編集センター、
に詳しいのですが、
飛騨方言では主語を示す格助詞・は、の音韻が特殊です。
以下にお示しします。同書から一部文例を借りています。
a -> 中は なかぁ
i -> 貝は かや
u -> 雷雨は らいうぁあ
e -> 稗は ひえゃあ
o -> 顔は かおぁあ
ka -> 赤は あかあ
ki -> 柿は かきゃ
ku -> 報告は ほうこかぁ
ke -> 池は いけぇあ
ko -> たこは たかぁあ
sa -> かさは かさぁあ
sji-> 寿司は すしゃあ
su -> カラスは からさぁあ
se -> 汗は あせゃあ
so -> 屠蘇は とさぁあ
ta -> 肩は かたあ
ti -> 内は うちゃあ
tu -> メンツは めんつぁあ
te -> 糧は かてぁあ
to -> 的は またあ
na -> 花は はなあ
ni -> 蟹は かにゃあ
nu -> 絹は きなぁあ
ne -> 金は かねぁあ
no -> 蓑は みのぁあ
ha -> 葉は はぁあ
hi -> 火は ひゃあ
fu -> 豆腐は とーふぁあ
he -> 屁は へぁあ
ho -> 稲穂は いなほぁあ
ma -> 暇は ひまぁあ
mi -> 紙は かみゃあ
mu -> ハムは はまぁあ
me -> 亀は かめぁあ
mo -> 鴨は かもぁあ
ya -> 蚊帳は かやぁあ
yu -> つゆは つやゃあ
yo -> 給与は きゅうよぁあ
ra -> 彼等は かれらぁあ
ri -> 橇は そりゃあ
ru -> 夜は よらぁあ
re -> それは そりゃあ
ro -> 下呂は げらぁあ
まとめですが、
ア列の体言 そのまま長音になる
イ列の体言 拗音になる
ウ列の体言 ア列の長音になる
エ列の体言 ア、の音になる
オ列の体言 ア列の長音になる
という事なのでしょうか。
つまりはア列の体言、ウ列の体言、オ列の体言では
同音異義語の問題が生じてしまうのでしょうね。
この点は飛騨方言の欠点ともいえましょう。
例えば、
ばさあ、まんだこん。
と言っても、バさ、つまり、婆さん、はまだ来ない、
とも聞こえるし、バスはまだ来ない、とも聞こえる訳です。
しゃみしゃっきり。
かさあ問題や、という飛騨方言ですが、傘は問題だ、粕は問題だ、
過疎は問題だ、はてどちらの意味になるのでしょうか。
これは問題だ。朝・明日・阿蘇、これも問題だ。
本当のしゃみしゃっきり。