大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
あおぞう |
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私:飛騨方言の多義語「あおぞう」は二つの意味を持つ(青二才、ひょっとこ)。 君:青の色は若い事の象徴、青二才は若い男の意味ね。「ひょっとこ」は火男が語源じゃなかったかしら。 私:火男説は柳田國男伝説ってやつだ。海南小記にある。竈神(かまどがみ)に醜い神像を作る東北一般の風習からヒントを得たらしい。柳田民俗学の真骨頂だね。 君:あおぞう(=ひょっとこ)は全国共通方言かしら。 私:それがそうでもない。小学館日本方言大辞典にすら記載がなく、飛騨の俚言、それも朝日・久々野辺りのみで話される言葉ではないかと思う。方言資料によると、青憎・青童、などの当て字が確認できる。個人的には青蔵かとも思う。共通語では「あおんぞう」とも言い、これまた別の意味の多義語で、青二才・熟していない果実・めくりカルタの役(団十郎)。飛騨では村祭りと密接に関係した言葉で、青鬼・赤鬼・あおぞ・おかめ、この四者が祭りを引き立てる。それぞれが被るお面については書かずもがな。四者とも男性が演ずるが、おかめは女役で、他三人は男役。 君:たった二つの意味でも多義語というのかしら? 私:それをいっちゃおしまい。音韻が変化せず、意味が増えたものが多義語。 君:青二才、ひょっとこ、共に男の意味。つまり意味は変化していないわよ。 私:それも言い出すと意味論という言語学の根本命題になる。突き詰めて考えるとわからなくなるね。意味論的には「あおぞう」は、青二才の意味では一般名詞であり、「ひょっとこ」の意味では実は村祭りの特定役という固有名詞である、という決定的な違いがある。ははは、どうだい。 君:ただし、大西村を含む飛騨の特定の地域でしか通じないノスタルジックな言葉ね。故郷を懐かしむのも結構ですが、多分、全国の皆様にはチンプンカンプンだわよ。 ほほほ |
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