大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

飛騨方言の理解に役立つか役立たないか微妙な日本文学

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泉鏡花、高野聖、新潮文庫・・・飛騨の天生峠を舞台にした妖怪小説。果たして妖怪が話す飛騨方言とは。確かに小説の舞台はバリバリに飛騨なのですが、飛騨方言は一切、出てきませんでした。従って、飛騨方言資料としての価値はありません。確かに妖怪は方言を語るのですが、これが何と申しましょうか、やや関東系のような、地域を特定しがたい、所謂、なんちゃって方言っぽい口調、という事でした。但し、飛騨の幽玄の山間を文章で味わい方、鏡花ファンのお方は是非、ご一読あれ。

天の夕顔、中河與一、新潮文庫・・・戦前の小説で、ほとんど世に知られていない小説ですが、舞台が飛騨の数少ない純文学です。場所は神岡町、特に山之上です。現在、山之上牧場には文学記念館が建てられ、作品に関連する資料が展示されています。山之上牧場は飛騨に数少ないキャンプ地で、一言で言えば日本のチロル地方、とてもロマンチックな高原です。国際観光都市・高山とは違って飛騨の素朴な片田舎の風景です。私はオートバイでふらりと、よく訪れます。昭和13年の発表、つまりは世の中が戦時色のみの暗い世相の時代だったからこそ、この余りにも切なすぎる純愛小説は戦中、戦後に多くの日本人に愛されたのでした。主人公は都会の出身にて飛騨方言は出てきません。別稿1 別稿2

「白線流し」を知っていますか、フジテレビ編、角川文庫・・・「白線流し」は岐阜県立斐太高等学校の卒業式の伝統行事である事が国民の皆様によく知られていますが、フジテレビの連続ドラマ「白線流し」が有名すぎると思いますが、実はフジテレビによって1992年と96年の二回、斐太高校の卒業間近の三年生の数名をおよそ半年、ルポするというドキュメンタリー番組が放映されたのでした。この角川文庫はその取材過程を文庫本化したものです。皆様の心の中にある高校三年最終学年の思い出と照らし合わせながらお読みになると、このルポ誌の迫力がお分かりになろうかと思います。

フジテレビ「白線流し」(おまけ)・・・フジテレビではこれで一区切りとの話もあったそうですが、このままでは惜しい、ドラマ化しようという事で、92年の同年に酒井美紀主演のドラマ「白線流し」がスタート、2004年までのドラマとして国民の人気番組となったのでした。テレビドラマ「白線流し」の舞台は飛騨高山改め長野県松本市の設定、主人公・七倉園子は憧れの教師と同じ道、つまりは高校国語教師を目指し早大教育学部に進学、卒業、夢を果たします。但し彼女が果たす事の出来なかった夢が、初恋の人・大河内渉(長瀬智也)と結ばれる事。乙女がひとりの女性として成長するまでを描いた、あまりにも切ない物語。ドラマは次々と思わぬ展開となり、観る者を決して飽きさせません。ただし娯楽番組に付き、内容は他愛のない内容と言ってしまえばそれだけの事でしょう。

私にとってドラマの秀逸な点は、斐太高校の旧校舎もロケに使われて映像が出て来る事です。勿論、かつての合崎橋も出てきます。斐校卒業生ならではの楽しみもあるドラマなので是非ともDVDにて鑑賞なさいませ。但し、私にとって残念な事にロケ地は主に松本です。何故、高山市にならなかったのかと言うと、ドラマのテーマのひとつが、地元か東京か、という事だったようで。つまりは松本には信州大学がありますが、高山には岐阜大学がありません。また松本は中央線で東京新宿に近く日帰りの距離ですが、飛騨から東京へは名古屋経由で片道でさえ一日がかりです。実は高山は北陸の都・金沢に圧倒的に近く、東京や名古屋ですら遠いと感じてしまう土地柄なのです。もう一つ、ロケ候補地が高山では無く松本に軍配が上がったのが私鉄の有無です。大切な恋のすれ違いの設定場面です。松本には松本電鉄があり郊外と市街を結びますが、高山市には郊外と街中を結ぶ私鉄は有りません。となると必然的に松本が選ばれた次第で、旧高山市民・斐校卒業生の私としてはチョッピリくやしいのですが、こればかりは致し方ありませんねぇ。

文豪怪談傑作選・柳田國男集・幽冥談 遠野物語他、短編集。手軽な柳田学入門書。

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