大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
ジャガイモ |
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私:ジャガイモを一言で表現すると、この言葉なくして方言学は語れない。意味、分かるよね。 君:ここは語彙のコーナーなので、つまりは全国各地でいろんな呼び方がある、つまりは方言量が多い言葉という意味よ。 私:正解だ。そこで出てくるのが八坂書房の日本植物方言集成。ジャガイモについては7頁に渡ってぎっしりと書いてある。数えるのもおっくうだ。ざっと三百以上という事にしておこう。この方言量はカタツムリを抜いているかも知れないね。 君:知れないね、とは歯切れが悪いわね。 私:ひとつには文献に上がる言葉しか出版されないが、全国各地の言葉が全て文献になっているとは限らない。それにいくら方言量が三百以上の記載であるにせよ、言葉は生き物故、かなりの語彙が既に死語になっている可能性もあるのだし。 君:それはそうよね。 私:17世紀の初めにインドネシアのジャカルタからやってきたからジャガイモ。これは基本中の基本という事で、共通語としては馬鈴薯としても知られる。 君:では早速に飛騨方言の語彙をお願いね。 私:せんだいも、せんだいいも、ぜんだゆういも、せんだゆういも、こーぼーいも、しろいも、しんしも、しんしゅういも、なついも、にどいも。飛騨だけでも十通りの言い方がある。 君:日本の古来種ではなく、つまりは和語の種ではなく、後世にポンと日本に渡った瞬く間に日本中に広まった植物だから方言量が多いのよね。トウモロコシもそうだわ。 私:ところで飛騨にはどこから伝わったと思う? 君:ほほほ、ひっかけ問題ね。せんだいも、しんしゅういも、から類推すると、仙台或いは信州からかも、と考えたくなるわよね。 私:実は、せんだいも、せんだいいも、ぜんだゆういも、せんだゆういも、この四つは人名から。延享(えんきょう)・寛延の飛騨代官・幸田善太夫高成が飛騨に広めた。つまりは江戸からの直輸入。 君:しんしも、しんしゅういも、この二つは全国共通方言かしら。 私:その通り。新種いも、が語義。信州は関係ない。 君:しろいも、なついも、にどいも、ついては説明は不要ね。 私:その通り。敢えて言うなら年に二回の収穫が出来るという意味の、にどいも、は主に南の地方の方言。飛騨はこの言葉の北限かなと思いきや、函館にもある。蛇足ながら・・ 君:ほほほ、わかるわよ。いちどいも、という方言は存在しない。 私:その通り。意味もわかるよね。 君:勿論よ。年に二回も収穫できるという事は驚きそのもので、つい名前にしてしまいたくなるけれど、年に一度に収穫は当たり前すぎる事で感動が無いから、というのが答えね。ほほほ |
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