大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

坊さん、坊さん

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僕:昨晩は卑罵語「かんかんぼう(ず)」についてお話をした。

君:意図はわかるわよ。飛騨の童謡の本でも共通語に近い歌詞なので伝統方言に翻訳したいという事ね。
僕:そう。そもそもが伝統方言とは何?
君:近代語以前の方言という意味ね。戦前・戦後辺りまでの方言とも言い換えられるかしら。いまや各地の方言は廃れる傾向にあるわね。
僕:マスコミの影響だよね。僕達戦後世代はテレビ世代と言ってもいいかも。
君:では早速にお願いね。
僕:うん、早速。
坊さん坊さんどこいくんや
おう、おりゃ田んぼへ稲刈りに
おーりもいっしょにつれてくりょ
わーりが来るとじゃまなんや
このカンカン坊主くそ坊主
後ろの正面だーりや?
君:説明お願いね。
僕:はいはい。まずは人称代名詞。飛騨は独特で、自称は「おり」、対称は「わり」、不定称は「だり」。
君:「おりゃ」は「俺は」の拗音化ね。
僕:その通り。格助詞「は」は必ずと言っていいほど拗音化する。その他の格助詞は音韻変化しない。
君:続いては?
僕:指定の助動詞「だ・じゃ」の東西対立で、飛騨は大阪と同じく「じゃ」。つまりは「どこいくんや?」は「どこへいくのじゃ?」。
君:「くりょ」が飛騨以外の方々には聞きなれない音韻ね。
僕:「くれよ」の拗音化だね。これがあると俄然、飛騨方言らしくなる。
君:「だーりや」の「や」は拗音化しないという意味かしら。
僕:それはとてもいい質問だ。「だれが・だれじゃ?」の意味の区別の為に拗音化の有無で弁別する。
君:これは幻の歌詞という事で実際に歌われたという意味ではないのね。
僕:勿論。この童謡が全国に広まったのはレコードの普及という事で、エジソン以降の事だろうね。あるいはラジオ放送かも知れない。その辺の調査は続行中。
君:まあご苦労様な事。
僕:ところで童謡で有名といえば「かごめかごめ」とか「底抜け鍋」とか、遊びと不可分な歌だが、「坊さん、坊さん」はちょっと違うね。要は「カンカン坊主くそ坊主」この歌詞を思いっきり大きな声で歌う事が楽しい、いわゆる子供なりのストレス発散の歌だ。
君:あら、そうかしら。
僕:うん、ストレス発散もあるが。・・実は一番の目的はツンデレだな。
君:ほほほ、好きな女の子にこそ歌を浴びせかけて、愛の告白という訳ね。でも女の子にとっては手鞠歌よ。ちょっびりおてんば気分と言うところかしら。
僕:なるほどね。女の子も歌って楽しいし、確かに手鞠歌にはぴったりだな。男の子の場合は好きだからこそ、からかい挑発する。
君:嫌われるかもしれないというリスクがあるわね。でも、私に関心があるのね、という事で歌われたほうもすぐに気づくわよ。ほほほ

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