大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 飛騨方言 You Tube Contents

高山LOVER/飛騨方言バージョン

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私:まずは動画をどうぞ。

君:今、流行りのオンラインバンドのにわか結成ですね。
私:遊びをせむとや生まれけむ/戯れせむとや生まれけむ/遊ぶ子供の声聞けば/我が身さへこそゆるがるれ。軽快ですね。
君:テーマは飛騨の若者文化という事なんでしょ?
私:お察しがいいですね。つまりは「新方言」「ネオ方言」「方言コスプレ」について。
君:ほほほ、まとめて若者言葉という事なのに。歌詞からわかる事、つまりは全国の読者の皆様がお感じになる事は、飛騨方言って関西方言に近いな、という事じゃないかしら。
私:まあね。それでもね、「新方言」は井上史雄先生、東大卒で東外大教授の提唱、「ネオ方言」は真田信治先生、金沢卒で阪大教授の提唱、お二人は日本を代表する学者様、つまり東西両横綱なので、両者ともに定義は一歩もお譲りになりませんよ。
君:歌詞のどの部分かしら。
私:。「言いたい事、言えんくて」これは新方言ですよね。新方言の定義は、現代に生まれた方言の中で若い世代に多く、非標準語形、使用者自身が方言として認識、の三条件を満たすもの。若者が標準語にない語彙を方言から取り入れる現象。例「違っていて」を「違くて」。
君:ふむふむ。
私:「何度ここへ来とったって」これはネオ方言ですかね。ネオ方言の定義は標準語と方言の接触による混交形式・中間的スタイル、標準語と方言のバイリンガルがダイグロシア(二言語併用社会)の状況を呈する事、スピーチスタイルである点が「新方言」とは異なる。例…行か「へなんだ(方言)」+「なかった(標準語)」→「行かへんかった(ネオ方言)」。
君:微妙ね。
私:それでも平成23年度日本語教育能力検定試験等を見ても、外国人に日本語を教える教師になるにも覚悟が必要のようですね。
君:「方言コスプレ」はどうですか。
私:この歌全体が方言コスプレでしょう。同語は日本大学教授・田中ゆかり先生の提唱、方言を玩具のように使うこと。「ことばの仮装」「方言萌え」とも言います。
君:ではこのへんで。
私:ちょ、ちょっと待ってくれ。それでいいのか。
君:えっ、どういう事?
私:歌詞だけど
「明日さ、たまにはいいにか」「一生に一度の告白やにか」「あれ催促してまったにか、もう」
ほら三回も使われているじゃないか。飛騨方言丸出しの歌で、飛騨の人達には説明不要の意味だよね。
君:ほほほ、天才バカボンね。「いいにか」は「いいのか」という意味ではない。しかも飛騨以外の人にはその事がわからない。
私:正にその通りだ。「いいにか」の意味は「いいのではないかい(いいに決まっています)」の短呼化だよね。「のではないかい」は7モーラだが、これが2モーラに削られる、つまりは5モーラも削る過程というのは
7「のではないかい」
6「のやないかい」
5「のやないか」
4「のやなか」
4「にやなか」
3「にやか」
2「にか」
のような音韻の変化によるものとしか考えられない。と言うか、このような音韻変化を飛騨の人間なら瞬時に理解できるよね。僕はこの曲を生まれて初めて今日聴いた。「にか」という文末詞ですら。要するに彼女らも私も飛騨の人間だから、彼らが即興で作った飛騨の言葉で瞬時に心が通じ合うんだ。
君:言い換えれば、お里が知れてしまうという事よ。しかもあなたは気が若いだけ。還暦過ぎたどころか不惑が近いのよ。つまりは昔、というか流石に昭和の時代には飛騨方言で「にか」という文末詞は無かったわね。
私:ここ十年ほどの飛騨の若者の言葉遣いだと思う。僕はこれを「新方言」でもなく、「ネオ方言」でもなく、「方言コスプレ」には違いないけれど、「究極の短呼化」と名付けたい。だから、今、大慌てで同語をネット検索した。なんと、僕が書いた記事だけがヒットした。飛騨高山高等学校 山田キャンパスの紹介B
君:あら、そうなのね、おめでとう。「究極の短呼化」は大西佐七の提唱に間違いなさそうね。ほほほ、本業を置いて国語学会の活動をしたり出版していなかったのが残念ね。
私:ははは、いや、いいんだ。グーグル検索でトップにさえ躍り出れば僕は大満足、かくして「究極の短呼化」は僕の提唱した言葉として皆に認知される。
君:面白いあなた、というか、若しかして医者が病んでる?飽きもせず毎晩、方言をブツブツ独り言。要は「究極の短呼化」は2モーラなのね?
私:ははは、待ってたぞ、その言葉。実はもっと削る事も出来るんだ。手始めに1モーラだが
「明日さ、たまにはいいに!」「一生に一度の告白やに!」「あれ催促してまったに!、もう」
ほらね。また反って意味は通りやすくなったでしょ。僕はこの場で全国の皆様を前に即席で主張の文末詞「に」を作ったって事だ。更にはおまけに2モーラの飛騨方言文末詞「やに」を即興で作ったのさ。ついでに「主張の文末詞」もネット検索してみよう。・・むむ、しまった、 主張度の強い場面における女性文末詞使用・・こちらは北九州市立大学の水本光美先生に先を越されてしまった。
君:ほほほ、しかも若い女性に。グヤジイあなたやに!
私:そうやに!!ええい、ついでだ。もっと削ってやれ、いっそ無モーラ、文末詞無しだ。
「明日さ、たまにはいい!」「一生に一度の告白や!」「あれ催促してまった!、もう」
ほらね、更に意味は通りやすくなったでしょ。実は主張の文末詞「にか」って省略可能なんだよ。「文末詞省略表現」ってな学術語っぽい表現が今、突然に思い浮かんだ。でも 省略現象から見えてくること−「磁石」な日本語と「チェーン」な韓国語−・・なんだよ、既に東大の先生が僕と同じ事を考えていらして、こちらも先を越されちゃったな。2017年かな?磁石な日本語か、うまい表現だな。
君:相手はプロよ。しかも東大。アマチュアのあなたの相手じゃないわよ。
私:僕の未来予測、今後だが、1モーラで48通りの若者言葉が出来るだろうし、2モーラで48の二乗、ざっと千通りの若者言葉が花咲くかも知れない。これで「究極の短呼化」出版できそう。
君:え?へぇ!まじ!やだ!もぅ!「せにか(やりましょう)」は無しやに。
私:おっと、あなたもやるに。なんとサ行変格やに。ところで「究極の短呼化」って要は若者のLINE文化だよね(⌒∇⌒)。
君:よね(∩_∩)。
まとめ 飛騨方言文末詞「にか」は「のではないか」という、要求を強く主張する事を表す助動詞。全国的にも珍しく、平成・令和あたりの飛騨の若者言葉である。

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