除塵について

 取水ページに記載の通り、河川内にフィルターを設置するのが困難なため、ゴミ等も含めて取水し、上水槽手前の除塵管でろ過する手法を取っています。
 河川水量が豊富な場合や、治山ダムから直接取水する場合は、もっと適した手法がありますし、要するに地形に合わせて総合的に判断します。

↓除塵管は穴を開けた塩ビ管の内部をステンレスメッシュで囲い、取水管に直結し、ゴミ等も含んだ河川水を通過させてろ過します。
 下図の管は細かい穴をたくさん開けて手間がかかっていますが、ステンレスメッシュの破損に注意すれば直径数pの穴でよいです。
除塵管本体

↓ステンレスメッシュは上端を折り返して除塵管内部に挿入します。ソケットは縦に一か所切断して口径が広がるようにしておけば、着脱が楽です。
ステンレスメッシュ設置方法1

↓ステンレスメッシュ(平織金網)は1×0.45mの製品を段差ができないようにステンレスの針金で繋げるか、長くて安価なものをネットで探して、高めのハサミで切断して使用します。
 規格は線径0.29〜0.47mm網目0.98mm(20メッシュ)〜2.07mm(12メッシュ)を使っています。
 線径が太いメッシュほど長持ちする分、網目が広くなり上水槽に砂が溜まりやすくなるため、網目が細かく線径が細すぎず安価に入手できるものを選びます。
ステンレスメッシュ設置方法2

↓以上の要領で製作した除塵管を取水管に繋げ、取水口〜取水管〜除塵管〜河川への土砂の排水路まで可能な限り一直線になるよう配置します。
 一直線に配置しないと増水時に流されて来る膨大な土砂をスムーズに排出できません。
 また当然ながら、ろ過した水を上水槽が受け取れるように配置する必要もあります。
除塵管全景
↑取水管と除塵管の接合部を接着受口自在曲管にすると、除塵管の角度調整が楽です。

↓画像は試作中の悪い例で、角度45度の継手を多用し、除塵管と排水路が直角に交差しています。豪雨で赤丸部分に土砂や枝木が毎回滞留しました。
 どうしても直線的に取水管を配置できない場合、15度程度の継手を間隔を空けて用いて管を繋げ、カーブを緩くするといった配慮が必要です。
除塵管配置の悪い例

↓除塵管は、メッシュ部分が流れて来る落ち葉等により徐々に目詰まりしますので、週一回掃除する手間を省きたければ十分な長さが必要です。
 塩ビ管の上部を細長くカットしたものを除塵管下部にはめ込み、U字に曲げた全ネジを穴あけ加工したメッキパイプに通してナットで締め上げて固定しています。
 地形的な制約がなく、除塵管の下に上水槽を追加して置くことができれば不要な細工です。
除塵管の延長

↓除塵管の先端(排水側)の下に廃材を挟むなどして持ち上げ、除塵管の角度を浅くすることで流速を落とし、ろ過する水量を増やす方法もあります。
 除塵管は管内を通過する土砂を水で押し流す必要があるため、下図のように、一定以上の余水があるよう、長さや角度を調整する必要もあります。
 また、管内を通過する岩からメッシュを保護するため、平鋼を挿入してあります。(下図左側の除塵管内)
 平鋼は上端をステンレスネジで固定しており、下端を上下に振動させればメッシュにこびりついた落ち葉をある程度排出できます。
除塵管の余水と平鋼

↓塩ビ管の上部を細長くカットした切れ端は、除塵管の下部に煮締めバンドで固定して抜き差しすることで、余水量の調整に活用できます。
除塵管の余水調整

 余水が必須のように書いていますが、余水が無く除塵管内に土砂が溜まっても、量によっては大雨で取水量が増えれば押し流してくれる場合もあります。
 いずれにしても、猛烈な雨で流された枝木が取水口に詰まり始めると、取水量が減り余水が無くなるものの土砂は流入を続け、ほんの数時間で除塵管内が埋まります。
 除塵管内が完全に土砂で埋まれば、取水管への入水が止まるため、取水管が全て土砂で埋まるといった心配はありません。
 除塵管内の土砂をある程度かき出し、取水口の詰まりを取り除けば、水流により復旧可能です。

※あまりに雨がひどい場合は水の濁りも勢いもすさまじく、水圧管路内に細かい砂が侵入してしまうため、豪雨で取水口が詰まるのは悪いことではないです。
 台風等に備えて事前に発電を止めておく必要もないので、実際安全です。
 土砂崩れで水圧管路が損傷する最悪のケースでは、管路に水が流れていない方が安心です。

↓除塵管上端の上部に穴を開けておけば、除塵管の排水側が土砂で詰った際に水と土砂が穴から抜けることで、除塵管全体が土砂で埋まることを防げます。
 また、これも当然ながら、穴の付近に上水槽があると土砂が飛び込んでしまう恐れがあるため、塞ぐなど対策をします。
 除塵管に平鋼を敷いていない場合は、下図のような器具でメッシュを掃除できます。ただし掃除せず水量を維持できるのが理想的です。
除塵管の上端の穴

↓ろ過した水から、メッシュの目より細かい砂を沈殿させる設備が上水槽です。砂が少ないほど水圧管路内や水車羽根車の摩耗を防げます。
 上水槽の規模は大きいほど良く、最低でも除塵管から取り込んだ水の流れを鎮める程度には容積が必要です。
 下図はスイコー社製のとても頑丈な特殊容器SK-1000を3つ、200mm相当の穴を2つ開け、ホースをパッキン代わりにして塩ビボルトナットで連結しています。
 さらに上水槽には落ち葉避けに防鳥ネットを被せています。積雪で潰れるような蓋でなければ、上水槽の覆いは何でもよいです。
上水槽

↓また、豪雨時は数時間で上水槽が砂で一杯になるほど濁流に含まれる土砂は猛烈なため、排砂口を設けて常時開けておきます。
 排砂管の口径が30mm未満だとサワガニが詰まって死んでしまうため注意です。弁は雨の少ない季節に排水量を節約する目的でつけています。
 砂の溜まり具合は上水槽の規模や水流によって変化しますが、排砂口付近に砂が溜まるよう、上水槽を傾けるか槽自体の構造を工夫しておくと後から苦労しません。
上水槽排砂口

↓画像は上水槽の終点部分で水車のノズルやブレードを保護する最後の砦のため、手前にフィルターを設けています。
 除塵管とは逆に、外側にステンレスメッシュを巻く構造です。
 ろ過や沈殿が通用しない腐食した細かい落ち葉による目詰まりがあるため、末端はフィルター無しで開口させています。
上水槽

↓画像右下は上水槽点検用の排水弁です。事故や性能テスト中に上水槽が土砂で埋まってしまうと排出が大変なので、排砂口とは別に大口径のものを設けた方がよいです。
排水弁

↓水圧管路の手前にも弁を設けます。水圧管路が未完成又は破損中に取水〜除塵のテストを行うのに必要です。
 弁は安価なアルミ製バタフライバルブで、フランジ継手を節約するため上水槽に直付けしています。
 詳細は水圧管路の頁で解説予定です。
水圧管路の弁