HEAVEN 〜その力は誰のため?〜 大江戸ストアのタイムセールにも無事に間に合って、気分は上々。 にこにことして「今日のお夕飯、何食べたい?」と聞いてくるを後ろに乗せて、銀時の原チャリは万事屋へと戻ってきた。 「甘いもん食いてー」 「だーめ。昨日、パフェ食べたでしょう?」 「んじゃ、で糖分補給してー」 「え? どういう意味?」 どうやら、本当に意味がわかっていないらしいは、きょとんと目を瞬かせる。 まったくもって自分の想いがに伝わらないことに多少落胆しながら、銀時が玄関を開ける。 すると――― 「ーっ! 、っ!! 大変ヨっ!! 大変が大変で大変の変態ヨ!!!」 「え? え? か、神楽ちゃん?」 「オイコラ、てめー神楽。ドサクサに紛れてに抱きついてんじゃねーよ!」 「プッ。悔しかったら銀ちゃんも抱きつけばいいネ」 「それができりゃ苦労はしてねーよ!!!」 「え? え? 神楽ちゃん? 銀ちゃん?」 を挟んで言い争いを始めた銀時と神楽に、は困ったように視線を巡らせる。 すると、神楽の後をついてきていたのだろう新八と目が合った。 「新八くん。これ……」 「ええ。あの。その。何て言うか……」 しどろもどろの新八にが首を傾げていると、新八は後ろに回していた手を前に持ってきた。 その手の上にあったのは、の携帯―――だったもの、のようなもの。 いまだ言い争いを続けている二人を尻目に、は目を瞬かせる。 あまりに受け入れがたい現実に、思考がうまく対処できない。 それでも、現実は現実。いつかは受け入れなければならないのだ。 おそるおそる、は口を開いた。 「……もしかして、それ……」 「……そうです。さんの携帯―――」 「そうネ! の携帯に変態が忍びこんで大変で大変の大変な変態だったアルヨ!!!」 「お前な。わかる言葉を話せ」 だが神楽は、とにかく大変だ変態だと喚くだけで、話にならない。 代わりに一部始終を見ていた新八が、話し始めた。 それによると、どうやらの携帯が突然鳴り出して。 驚いた神楽だったが、その時点では流石にまだ破壊行動にまでは至らなかった。 しかし、偶然押してしまったボタンで、受信したメールを開いてしまったのだ。 それがまた、迷惑メールの類であったらしく。 いかにもな誘い文句に「チャラ男のくせに、の携帯にメールするなんて厚かましいネ!!」と神楽は怒り心頭。 だが、その時点でも携帯はまだ無事だったのだ。 問題は、その後。 そのメールに貼られていたリンクを、何の偶然か押してしまったのが運の尽き。 現れたえげつない画像に、神楽がブチ切れ。 「の携帯を汚すんじゃないネ、この変態!! 死ねやゴルァァァァ!!!!」と携帯を床に叩きつけ、踏みつけるわ傘で殴りつけるわ――― そして、現状に至るのだそうだ。 「! もしかして、毎日あんなのが来てたアルか!!? どうして早く言わなかったのヨ! 私が助けてあげたのに!!」 「むしろてめーがに迷惑かけてんじゃねーか……」 だが、そんな銀時のツッコミも耳に入っていないのか、神楽は必死の形相での身体を揺さぶる。 そんな神楽の様子に、携帯電話の惨状に呆然としていたも、ようやく笑みを浮かべるまでに我に返る。 確かに、迷惑メールに辟易していたのも事実。 しかもそんなものを、初めて携帯に触れたのであろう神楽が見てしまっては、驚くのが当然。 結果がどうあれ、神楽がの身を案じてくれていたことに変わりはないのだ。 それを思うと、胸中に温かいものが広がるのをは感じた。 「ごめんね、神楽ちゃん。でも、神楽ちゃんに余計な心配かけたくなくて」 「水臭いネ! 私との仲アルヨ! 遠慮も呵責もいらないネ!!」 「……確かに呵責はわたしもいらないけど」 苦笑しながら、それでもは神楽の頭を優しく撫でる。 「ありがとう、神楽ちゃん。わたしを助けてくれたんだね、神楽ちゃんは」 「何てこと無いヨ! 私の力は、を守るためのものネ!!」 何やら二人の世界に入り込んでいる女二人に、残る男二人はついていけてない。 新八に至っては、壊れた携帯を手に、一体これをどうすべきかという悩みまである。 やはり弁償すべきなのであろうが、しかし今の万事屋に、そんな金銭の余裕などあるはずもない。 一人悩む新八に、ようやくこちらの世界に戻ってきたが気付く。 「あ、新八くん。携帯はね、その、もう気にしなくてもいいよ」 「ですけど……」 「ついでだし、携帯解約しちゃうことにするから」 実は基本料金もなかなか払えないんだよね、とのの言葉は、暗に万事屋の給料の低さを示している。 そのことに、新八はますますに対して申し訳なく思うのだが。 しかし、本来申し訳なく思うべき万事屋の主・銀時は、逆に内心、非常に喜んでいた。 が携帯を持たなくなる、ということはすなわち、沖田からの毎日のメールも無くなるということで。 「おぅ、神楽! 特別ボーナスは酢昆布か? 酢昆布だな? 酢昆布でいいよな、酢昆布娘?」 「……銀ちゃん、どうしたネ。気持ち悪いアル」 上機嫌な銀時に、神楽は少し怯え、は首をかしげ。 その理由を薄々察した新八は、誰にともなく、深い溜息をついたのだった。 10← →12 書き出すと一気に書けるのが、この連載。 頭使わずに書けるんですよねー。中身が無いからでしょうか(をい) ![]() |