HEAVEN 〜あなたはペットか友達か〜



土方から携帯を買ってもらってしまったことを銀時に伝えると、またもや不機嫌そうな顔をされてしまった。
仕事の依頼なのだと説明しても、その不機嫌が直ることはなく。
が困っている横から「銀ちゃん、大人気無いアルヨ」「文句があるなら、自分が携帯を買ってあげたらいいじゃないですか」と神楽や新八が口を挟む。
それが一層、銀時を不機嫌にさせるのだ。
 
「どうせは、真選組のヤツらの方がいーんだろ?」
「ぎ、銀ちゃん…そうじゃなくって……!!」
「べっつにー? 俺のコトなんか気にしなくたっていーじゃん」
 
そんな銀時に、ますますが困って、悪循環。
見かねた新八が「僕がどうにかしときますんで」と、とうとうは外へと追いやられてしまった。
確かに、どうやら自分のせいで不機嫌になっているらしい銀時と同じ部屋にいるのは、居心地がよくなかったものの。
一時的とは言え、こうして外に出されてしまうというのも、寂しいものがある。
外に出たついでに買物をして。
とぼとぼと歩くの脳裏を占めるのは、銀時のこと。
新八がどうにかするとは言ってくれたが、このまま嫌われてしまったらどうしようと、そんな思いばかりが過ぎる。
にとって銀時は、助けてくれた恩人なのだ。嫌われたくはない。
溜息をつきながら、川にかかる橋を渡る。
と、その中頃で。
思わず足を止めてしまうようなものが、欄干の前に鎮座していた。
まさに『鎮座』と表現したくなるような、圧倒的な存在感。
 
「……誰か拾ってください?」
 
大きなダンボール箱に書かれた文字を読み上げる。
だが、の目に留まったのは、ダンボール箱そのものではなく、その中身。
ダンボールの中には、『何か』が鎮座していた。
それが何なのか、は見たこともないのでわからない。
背丈は、自身よりも大きな、白い『何か』。背中が黒ければ、巨大なペンギンだとでも思ったかもしれない。
ぴくりとも動かなかったその『何か』は、しかしがじっと見つめているのに気付いたのか、ちょいちょいっと手招きをした。
動いたことに驚いたではあったが、招かれるままに近寄ってしまう。
 
「どうしたの?」
 
言葉がわかるのかどうか。それでも思わず問いかけると、その『何か』はダンボールを指差す。
そこに書かれた文字は、先程が読み上げた通り。
 
「拾ってほしいの?」
 
再び問いかけると、その『何か』はコクコクと頷く。
どうやら喋れはしないようだが、こちらの言葉はわかるようだ。
拾ってほしいと言うことは、事情はよくわからないものの、捨てられてしまったのだろうか。
その姿が、何故か自分に重なるような気がして。
別に、捨てられたわけではないというのに。ただ少し、すれ違ってしまっているだけで。
それでも、目の前の『何か』を放っていくことなど、にはできなくなっていた。
 
「と言っても、うちも狭いから、居心地はよくないと思うけど……」
 
狭い上に、最近は家賃まで滞納し始めている。
こんなに大きな生き物を連れて帰ったりしたならば、大家がいい顔をしないだろうとは思ったものの。
それでもは、右手を差し出した。
 
「それでもいいなら、おいでよ」
 
差し出したの右手に、その『何か』の手が重ねられる。
そのまま手を引き、ダンボール箱の中から連れ出す。
 
「あ、そういえば。名前、あるのかな?」
 
聞いて、答えが返ってくるとも思わず、問いかける。
すると、どこからか取り出した紙とペンで、文字を書き綴る。
 
―――『エリザベス』?」
 
読み上げると、再びコクコクと頷かれる。
 
「そっか。エリザベスって言うんだ。かわいい名前だね!」
 
そう言って笑顔を見せるに、エリザベスは頬を赤らめる。
それに気付いているのかいないのか。
はエリザベスと手を繋いだまま、歩き出した。



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ヅラより先にエリザベスが出てきたよ(笑)
エリザベス、大好きです。人形欲しいです。