HEAVEN 〜携帯とあなたとイチゴ牛乳と〜



ここ最近、坂田銀時は非常に不機嫌であった。
新八に呆れられ、神楽に鼻で笑われようとも、それでも不機嫌であった。
その原因はと言えば。
 
 
たらりるたらりるら〜♪
 
 
「あ、メール……総ちゃんからだ!」
 
いそいそと携帯をチェックするの声に、銀時のこめかみが引きつる。
常であれば、聞いているだけで気分の向上するの声も、その単語に限っては、不機嫌指数を上昇させるだけにすぎない。
 
『総ちゃん』
 
いつの間に、あの真選組の人間と、そう呼ぶまでに親しくなったのか。
を問い詰めたところ、あっさりと「銀ちゃんと同じだよ。お店のお客さんだったの」との答えが返ってきた。
それだけならば、まだ我慢はできたのだ。
問題は、その沖田総悟のに対する態度と、毎日のようにの携帯に送られてくるメール。
目の前でそんなものを嬉しそうに読まれては、機嫌が悪くならないはずもない。
ついでに言えば、携帯の向こうで沖田が腹黒い笑みを浮かべているようで、ますます面白くない。
ゆえに、銀時は不機嫌なのである。
そんな銀時を気にかけることもなく、は嬉々としてメールを返信している。
 
「ねェ。私も携帯欲しいアルヨ。それでとメル友やりたいネ」
「んー。銀ちゃんに頼んだらどうかな」
「無理ですよ。携帯料金を払うお金があるなら、給料払ってほしいくらいですからね」
 
ジト目で睨む新八の視線を、銀時はそ知らぬふりでやり過ごす。
そんな銀時の態度はいつものことで、新八もそれ以上言う気になれないのか、これ見よがしに盛大な溜息をつくだけで終わった。
だが、もその様子を見て、無理なことは悟ったらしい。
第一、幾日かでもこの万事屋にいれば、その財政状況がどうなっているかなど、わかってしまう。
だからこそは、神楽が駄々をこねないうちにと、言い聞かせることにした。
 
「神楽ちゃん。メールはね、会えない相手とするものなんだよ?」
「そんなのイヤヨ! と会えないなら、メル友やらなくてもいいヨ!!」
「だよね? わたし、ずーっとここにいるから、ね? メル友にならなくてもいいくらい、一緒にいるからね?」
「本当アルか!?」
「正気ですか!!?」
 
の「ずっとここにいる」発言に、神楽は素直に喜び、新八はの身を心配して叫ぶ。
だが、最も嬉しがりそうな―――それこそ狂喜乱舞しそうなはずの銀時は、何かを口にするでもなく、ただぼんやりとしていた。
いや、ぼんやりとしていたのは表面上だけであり、その中では様々な思考が目まぐるしく駆け巡っている。
銀時も、の「ずっとここにいる」発言には、しっかり反応していたのだ。
しかし、そのの意図がどこにあるのかを掴みきれずにいた。
「ここにいる」とは、本当に万事屋にいるということか。それとも神楽の傍なのか。はたまた方便なのか。のことであるから、その可能性は非常に高い。
そう考えれば、新八の叫びにが曖昧な笑顔で返しているのにも、納得がいってしまう。
それなのに勘違いして喜んでは、に妙な目で見られてしまいそうである。
落ち着け、冷静になれ―――と。神楽と一緒に喜びかねない自分を抑えるために、銀時は必死だった。
あまりに必死になりすぎたため。
 
「……いちご牛乳」
「え? 銀ちゃん、いちご牛乳飲みたいの?」
 
に聞かれ、はっと銀時は我に返る。
落ち着くためにはカルシウム、カルシウムならばいちご牛乳、と思っていたのが、どうやら口に出てしまっていたらしい。
思わず反応に困る銀時に構わず、は「そういえば、もう飲み物無かったよね」「それどころか、冷蔵庫の中身は空です」と新八を言葉を交わし。
やがて、ぱん、と手を叩いた。
 
「じゃ、銀ちゃん。一緒に買物行こうよ!」



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すんごく中途半端……
文才欲しいな〜、とは思うものの、こればっかりは精進しか無いのかも。