飛騨方言では三拍形容詞の意味強調法のひとつに初拍長音化
があります(例 硬い -> かーたい)。他の方法としては初拍を促音便とし、残り二拍を
エ列で連母音融合させる話法です(例 硬い -> かってー)。
そして連体形では初拍にアクセント(○●○)、終止形では
長音全体がアクセントです(○●●)。
さて飛騨方言は東京式アクセント故、小生はただ共通語の
話法を記述しているだけの事かも知れませんが、
この二通りの用法に以下のような使い分けがあろうと思います。
つまりは形容詞・硬い、は
用法 初拍長音化 初拍促音便
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アクセント
連用形 かーとー かっとー
○○●○ ○ ●○
終止形 かーたい かってー
○○●○ ○ ●●、ないし
○ ●○
連体形 かーたい かってー
○○●○ ○ ●○
語気 女性的 男性的
意味 強調 強調
良い意味 悪い意味
しみじみ 驚愕
スピード ゆっくり 速く
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の如くになりましょう。
さて初拍がア行の場合は初拍促音便法は聞き取りにくいでしょうね。
例えば、あっめー、うっめー、えっれー、おっせー。
でも、いってー、は聞き取りやすいでしょう。促音便+てー、は
相性が良いようです。
また飛騨方言では、こわい、を常用します。
恐ろしいという意味ではなく、恐縮します・かたじけない、という意味です。
これの強調表現は、言い安さの点から初拍長音化法、こーわい・あれこーわいさあ、
と言う場合がほとんどでしょう。
あーれこーわいさ、に見る飛騨方言のリズム論
をご参考までに。但し、筆者が驚愕しておもわずこわいと発声する場合は、
あれっこっうぇーさ、の言い回し・初拍促音便法、と言うでしょう。