大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

のらマイカー

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僕:先ほどは傑作な動画を発見し、捧腹絶倒、これはもう書くしかないと思った。

君:表題ね。高山市が運営するコミュニティーバス。
僕:いやあ、知らなかったな。故郷を離れて長いからね。昔は濃飛バスが飛騨の隅々を走っていたのだが。北海道の数ある市を尻目に堂々たる全国一の面積の飛騨高山市。でも人口は数万。つまりは人口密度の低さも日本一という事だ。嗚呼
君:市長さんも大変よね。
僕:選挙カーはもっと大変。ぶっ
君:ところで今夜の話題は。「のらマイカー」のアクセントよね。
僕:そう。これはもう中高「ノラマ\イカー」で決まりでしょ。語源は書かずもがな、飛騨方言の助動詞特別活用「まい」をひねったもの。「のらまいか」と言えば「乗りましょう」という意味。アクセントは「ノラマ\イカ」。ところが動画では「ノ\ラ・マイカ\ー」のアクセントだよね。やれやれ
君:日本語のアクセントとしては「マイカ\ー」は正しいわよ。
僕:うん、その通り。但し、この場合は飛騨方言「乗らまいか(乗りましょう)」の掛け詞、つまりは方言グッズなので、やはり「ま」にアクセント核が無いと僕としては困っちゃうよ。
君:これって人が実際に話していらっしゃるのではなく、コンピュータの言葉、つまりは読み上げソフトなんでしょ。
僕:うん。その点も大変に問題だ。読み上げられる土地の名前、固有名詞、も間違いだらけ。「松之木(まつのき)」の事を「ショーノモク」と読み上げていたが、これだけは絶対におやめいただきたい。
君:「ショーノモク」は無いわよね。
僕:飛騨の大人なら全員が知っている地名。松之木試験場、皆があそこで運転免許証を交付してもらう。
君:あなたも。
僕:ああ、大学一年生で直ぐに免許は取得した。補習無し、仮免・本免とも一発合格。なにせ俺って中学生時代から無免許運転していたからなぁ。50年以上も昔の話、全ては時効だ。
君:それはいいから、せっかくだから「まいか」のおさらいをしてね。
僕:まいか(助動詞特別活用(特活))(2)にまとめてある。そもそも助動詞「まじ」の連体形「まじき」が「まじい」を経てできた言葉「まい」に終助詞「か」が付加したもの、つまりは婉曲に希望し勧誘する意を表すと言う事で、二重否定は一重肯定と同じという意味、つまり反語の言い回し。「のらまいか」は「乗らまじきか」、つまり「乗らないでおられようか」の意味。アクセントの事を今まで書かなかったのはうかつだった。
君:もうひとつ。「開合の区別」という音声学の問題があるでしょ。
僕:ぶっ、当サイトの鉄板ネタだね。四段動詞未然形が中央では「のら」から「のらう」になって「のらまじきか・のらうまじきか」に分裂した。飛騨方言では古語「のら」が変化せず「のらまじきか」が「のらまいか」になった。美濃方言では開合の区別が進化し「のらうまじきか」がやがて「のろうまいか・のろまいか」になった。
君:では、左七様、終わらまいかな。
僕:ちょっと待て。君は既に飛騨の君改め美濃の君。「終わろうまいか・終わろまいか」でしょ。
君:You said it ! Then, so much for today. ほほほ

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