大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
さゆ「白湯」 |
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私:先だって、NHK番組だったか、さゆ「白湯」、が頭高アクセントでびっくり。僕はどうしても尾高アクセントになる。 君:東京語では頭高ね。 私:まずはアクセント辞典を調べた。ふふふ、最近だが秘密兵器を入手。 君:秘密兵器? 私:古本だが、三省堂明解日本語アクセント辞典第二版第26刷。出版日は1996年。日本語は常に変化している。資料は多いほうがいい。古い辞典は言葉の歴史を知るのに極めて役立つ、という意味だ。 君:古本が大好きなのね。ほほほ 私:ああ、何とでも言え。大好きだ。さて、三省堂(1996)において、さゆ、の記載は頭高、尾高の両論併記。その後、改訂版が出るが、最新版(2021)も両論併記だ。その一方、NHK辞典では旧版(1998)は両論併記だが、ところが最新版(2016)では頭高のみとなったんだよ。僕が言いたい事はふたつある。 君:ほほほ、一つはご自身のアクセント・尾高は間違いではない、と。現に三省堂辞典最新版に両論併記されているのだから。 私:その通り。もうひとつは、さゆ、という言葉のアクセントは既に頭高が主流になっているという事。NHKとしては、尾高は認めない、というお立場のようだ。 君:アナウンサーさん達にアクセント教育をしていらっしゃるのね。 私:そもそもが、古語・さゆ、は古今夷曲集(江戸初期、狂歌集)に出てくるので近世語。語源としては「す素」あたりらしい(俚言収攬)。接頭辞なので、いきなりこれにアクセント核が発生した言葉とは考えにくいよね。ゆ湯、は尾高だが、まずは尾高アクセント・さゆ、が近世語として出現したのではなかろうか。現代語としては、特にNHK的立場としては頭高。つまりは、さゆ、のアクセントは十年ちょいで変わってしまったという事か。驚きだね。飛騨方言ネイティブの僕が東京という都会のアクセントについていけていない、という事かもね。 君:多少のアクセントの違いは気にしなくても。 私:いやいや、そんなわけにはいかない。なにせアクセント学なのだから。ところで、さゆ、のついでに、すがお・素顔だが、これは今も昔も頭高。これが実は日葡辞書にある(Sugauo)。 君:わお、それこそ大発見。ハ行音からア行音ではなく、ワ行音からア行音じゃないの。 私:そうなんだよ。スガホ、ではなく、スガヲが元々の音韻かな。歴史的仮名遣いでは、かほ、かをり、かをる、が正解なだけに、もう何が何だかわからなくなる。ましてやアクセントをや。 君:ほほほ、話すのが怖くなってきたのでしょ。 私:僕は飛騨の生まれ育ちだから今まで純粋な東京式アセントで話してきたと思いこんでいたが、大いなる幻想だった。素足、素肌、不出来、これらが皆、頭高だとは恐れ入ったね。今までずうっと尾高アクセントで話してきた僕だった。 君:世の中には気づかないアクセントというものがある。ようやくそれにお気づきなのね。左七君のアクセント探求は果てしなく続くようね。ほほほ |
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