不肖佐七辞書おいでまうの通りですが、
やめてしまう、置いてしまう、の二つの意味があります。
問題はそのアクセントです。▼○○○○つまり頭高です。
飛騨方言は東京式アクセント内輪系ですが、二拍平低型動詞の連用形に限り、
NHKとは逆のアクセントのようなのですねえ。例えば
NHK 飛騨方言
置かない おかんさ
○●●● ○●●●
置きます おきます
○●▼○ ○●▼○
置いて おいで
○●● ▼○○
置く おく
○● ○●
置けば おきゃあ
○▼○ ○▼○
置け おけ
○▼ ○▼
文例
NHK 飛騨方言
置いてしまう おいてまう
○●●●●● ▼○○○○
置いてしまった おいてまった
○●●●●●● ▼○○○○○
置いてください おいてください
○●●●●▼○ ▼○○○○○○
置いたよ おいたぞ
○●●▼ ▼○○○
○●●▼
置くよ おくぞ
○●▼ ○●▼
内省としてはこの程度の文例で十分でしょう。
飛騨方言では、〜てまう、という表現を常に下がり調子で発音するために、
連用形イ音便ではアクセント核が前方に移動するのです。
おいた・おいて、と二つの助詞に接続しても共に頭高のアクセントに
なるわけですね。
しかしながらアクセントがNHK式の逆になるのは連用形イ音便のみです。
しかも音便変化している場合のみです。これも例をお示ししましょう。
NHK 飛騨方言
見る 見てしまう みる みてまう
▼○ ▼○○○○ ▼○ ▼○○○
着る 着てしまう きる きてまう
○● ○●●●● ○● ○●●●
来る 来てしまう くる きてまう
▼○ ○▼○○○ ▼○ ○●●●
▼○○○○ ▼○○○
切る きってしまう きる きってまう
▼○ ▼○○○○○ ▼○ ▼○○○○
知る 知ってしまう しる しってまう
○● ○●●●●● ○● ○●●●●
最早あきらかですね。
見る・知る、の如くそもそも音便変化がない連用形では
アクセントの逆転はありません。また、切る・知る、の如く
促音便例でも拍数がかえって増えるために、音韻変化は生じません。