飛騨方言におけるサ変動詞・せるは未然形以外のアクセントがNHK式に一致し、全体としては東京式アクセントに
属します。表にしますと、
NHK 飛騨方言
未然 しない しん
○●● ○●
せん
○●
連用 して して
○● ○●
終止 する せる
○● ○●
仮定 すれば せりゃ
○▼○ ○▼
命令 しろ せよ
○▼ ○▼
禁止 するな せんな
○●▼ ○●▼
詠嘆 しないな しんなあ、せんなあ
○●●▼ ▼○▼○、▼○▼○
○●▼○、○●▼○
未然形においてのみNHK式と逆転ないし、
アクセントの揺らぎがあるのが飛騨方言の特徴でしょう。
例題ですが、得しない券、はNHK式では○●●●●▼○でしょう。
これを飛騨方言では得せん券・とくせんけん○●●●▼○。
接合語に属するのでしょう。
あるいはゆっくりと、とく・せん・けん○▼・▼○・▼○、と発音します。
アクセント核がみっつあり、このような言い回しは実は接合語ではなく分離語なのです。
むしろ明らかな分離語として助詞・撥音便を共に省かず、
とくを・せぬ・けん○●▼・▼○・▼○と発音した
ほうが飛騨人同士でも判りやすいでしょうね。
ただし、とくしんけん○▼▼○▼○、と発音すればユニークな
語彙・発音と言う事で飛騨人同士でも判りやすいかも。
でもなかには特進券と勘違いする飛騨人もいましょう。
ところがまた更に問題が。実は共通語では、とくせんけん○●●●▼○、と言えば特選券
のこと。飛騨方言の得せん券、つまり外れ券、はこれも共通語とは全く逆の
意味になってしまうのですね。同音同アクセント異義語・とくせんけん、なのです。
しゃみしゃっきり。