大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

ほずえ・上枝・飛騨方言

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JR高山線にある、高山駅のひとつ下りの無人駅・上枝ですが、 読みは、ほずえ。 地名について、江戸時代の書物・飛州志に 古語・穂末、があり、上枝、とは後世の宛て字に 間違いありません。

さて、本日知りえた新事実をお伝えします。 角川地名大辞典巻二十一・岐阜県、によれば、 上枝村・ほずえむら、とは 明治22年から昭和18年までの大野郡の自治体名。 旧清見村から、下切しもぎり・中切・上切・赤保木あかほぎ・ 下林・山田・下之切・新宮・八日町・前原の十大字が分離して 成立、村名を川上郷の上、三枝さいぐさ郷の枝、をとって 上枝・ほずえ、としたとの事。 昭和18年に高山市と合併、村は再び十分割され、 下切町・中切町・上切町・赤保木町・ 下林町・山田町・下之切町・新宮町・八日町・前原町、 となったのでした。

おまけですが、 東京なんて地名はついこの間できた言葉、 最初に漢字が決定されたのはいいものの、その読みは、 とうきょう・とうけい、で当初は混乱、議論の結果、 京都・きょうと、との対比という事で、とうきょう、に決定したのでした。 お察しの良い方にはわざわざ書くまでもないかも、 上枝・ほずえ、も難解文字には違いありませんね。 なかなかそのように読まれなくて、顰蹙を買った挙句、 高山市と合併するや直ちに廃止の憂き目に。 つまりは、上枝という宛て字は東京よりはるかに歴史は 浅く、短命だったのでした。

実は以上が前置き、ほずえ、という単語ですが、 ちょいと気取って古語になさったその真意を 考えてみましょう。 地誌の知識が必要になりますが、当時の上枝村の特産は、 紫草168,498貫目、ぶどう2,353貫目、馬鈴薯20,654貫目、 木炭11,000貫目、等々。

つまりは、下切・中切・上切、という大字名からも 推して知るべし(つまり広大すぎて三分割した)、緑豊かな畑が続く地で、 木炭が産業である事からも原野も多かったのですよねえ。 ですから葉っぱの先、という事で、ほずえ。 おそらくは鶴の一声の突然の宛て字。 でも、よくお考えになった、なかなかいい名前じゃないですか。

ところがその名は、 これまた突然に消滅し、 そして今はかつての田園風景を想像するのが 困難な情景となっているのでしょうね。 くだんのネット情報によれば、 紫草は日本の絶滅危惧植物50種の中に入れられるほど、 数を減らしているそうな。 振り返ってみれば、はかなくも消えた村名はその事を暗示していたのですよねえ。

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