でい・出居、とは
飛騨方言の建築用語ですが、
仏間の隣にある応接間・客間・奥座敷、の事をいいます。
でい、は全国の方言になっていますが、
実は京言葉にもあるようです。
語源は寝殿造りの応接間・出居のようですが、
出て人を迎える所、玄関の事を元々は示していた、
との記載があります
(堀井令以知、京都語を学ぶ人のために、世界思想社)。
ただし、出る、は平安時代は、いづ、と言っていたのでしたね。
勿論、現代共通語の、いる・居る、は
平安時代には、ゐる・自ワ上一、
といっていたのですから、居の部分はおおいに善しとしましょう。
実は平安時代の寝殿造りは、いでゐ、と言っていたのでしょう。
後世に、いでゐ>でい>でー、の音韻変化があったものと
筆者は考えます。旺文社古語辞典によれば、
いでゐ 出で居。名詞。客と対面する座敷。
客間。寝殿造りの母屋・おもや、の
外の廂・ひさし、の内部に設けてあった。
文例、著聞・八。
という事なのでした。ズバリ、語源の記載です。
とにもかくにもこれだけは言いたい、平安時代の動詞は、いづ、
なのです。未然形・連用形で、いでづ、いでて、等々
と話され続けて終には語頭の一音・い、が脱落し、
いづ>でる、と音韻の変化が生ずるには
相当の年月がかかったはずです。
いでゐ>でい、の変化も相当に時間がかかったのでは。
ですから旺文社古語辞典を信ずる限りは
少なくとも平安時代は、いでゐ、と言っていたのであり、
でい、といわれたのは後代であろうと考えます。
p.s. 出で居をキーワードにネット検索しますと数千件ヒットしますが、
出で居たり、というありきたり表現が大半であり、
悲しい事に方言資料の検索が困難です。
老婆心ながらあきらめなさいませ。
それでも例えば、"出で居 いでゐ 座敷 奥座敷 客間"、
を用いて検索すると、茨城方言サイトがひとつヒットしました。
かといって手元資料、小学館日本方言辞典などにも、でい、の記載はなく、
筆者にとってはありきたりの飛騨方言であっても、
実は孤独な日本語のようですね。