大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

飛騨方言・尾根(2)

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尾根という言葉は実は共通語としては近代語であり、 古くからの中部山岳の方言である事を別稿・尾根に記載しました。 その成立の謎を少し紐解いてみましょう。 以下は金田一先生著の丸写しではなく、あくまでも佐七の 頭から出てきたものですが、内容が無い様、とおっしゃる方も若しや。

要は、尾も根も古語なのに何故、中世の中央で尾根という 単語が発生しなかったのでしょう。 考えるに、言語学のふたつの重要則、
最小語条件 ( 人は生来1モーラ語を禁止するという言語学仮説 )
短音長呼 ( 西日本に多く、例えば歯をハーと伸ばす事。長音短呼の逆 )
という事でしょうね。 つまりは、畿内方言では尾・根といっても、おお○▼・ねえ○▼、と 各々が二拍の尾高アクセントで発音されるので、四拍の癒合語など 生ずるべくもないと筆者は考えます。

一方、飛騨方言では、そもそも短音長呼が無く、ただしお尾▼・ね根▼、という一拍の名詞を嫌って、 つまりは、やはり最小語条件が働いて、二拍名詞おね○▼が 出来たという事なのでしょう。

また飛騨方言では、川が流れる所は谷、ちょろちょろと水が流れる所は沢、 また雨の日以外は枯れている沢の事を、さこ○▼、と使い分けます。 つまり、二拍名詞の対・おね○▼・さこ○▼、は隣地境界を 決めるのに必要な言葉、おねざかい○●▼○○・さこざかい○●▼○○、になります。 ですから、飛騨方言・尾根ができたのはいつの世でしょう。 古代でしょうね。万葉の時代でしょう。 生活に必要な言葉というものは古くからあるものです。

その一方、東京には尾根がない。東京から信州にはじめて登山に行った人達に とっては、尾根という言葉は、生活の言葉ではなく、 レジャーの言葉なのでした。

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