大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム方言学<

四段活用と五段活用、その二

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佐七:飛騨方言は四段、名古屋・岐阜方言は五段、という事を別稿・四段活用と五段活用に書いたが、まだまだ、疑問は続くんだよ。
家内:理屈は後回しで、どんどんと例文を出したほうがいいわよ。
佐七:ほいきた。実は飛騨方言でも五段は使う。例えば
共通語  あそこへ行こうか、と思った。・五段
飛騨方言 あそこへ行こが、と思った。・・五段
ついでだが、共通語では
着ようか、と思った。・上一
寝ようか、と思った。・下一
来ようか、と思った。・カ変
しようか、と思った。・サ変
と言うところを飛騨方言では
着よが、と思った。・・上一
寝よが、と思った。・・下一
こよが、と思った。・・カ変
せよが、と思った。・・サ変。
と言う。おう>お、の連母音融合及び、非語頭カ行子音の濁音化が在ると言う事だけであり、共通語と文法は同じだ。
家内:あなたが疑問に思う気持ちはわかるわ。飛騨方言では中世の四段活用と近世の五段活用をなぜ混在して使用しているのか、という疑問でしょ。名古屋や岐阜の影響を受けて次第に五段化しつつある、という説明ではいけないのね。
佐七:まさにその通り。説明は難しい。現に、飛騨方言では、あそこへ行こまい、と思ったとは決して言わないからね。
家内:それもそうだわね。
佐七:では、種明かし。上記の例文から明らかなごとく、飛騨方言では五段であるものの、助動詞特別活用(特活)・う、が省略されている。だから疑問の終助詞が五段未然形に接続しているのではない。四段の活用では直接に、まじ、が未然形に接続しているのさ。四段であれ、五段であれ、キチンと古語文法に従って活用している、とても規則正しい、お上品な飛騨方言なのさ。行か・四段未然+まじ、行こ・五段未然+助動詞特活・う・連体形+疑問の終助詞か、の係り結びだろう。
家内:飛騨方言は、やはり古風で由緒正しい感じがするわ。
佐七:ありがとう、でも係り結びといっても少し恥ずかしい事もある。
家内:この間、お父様が私達が送ったお酒を
うーむ、これぞ酒なり
とおっしゃった事、あれは飛騨方言じゃなくて酔っ払い。

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