大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
たあけにする |
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私:別稿・たあけの通りだが、飛騨方言では「たわけ(者)」の意味で用いられる。そして今回の話題は「たあけにする」。 君:やめてよ、そんなつまらない話。「馬鹿にする」という意味以外に何があるというの。それに全国アホ・バカ分布考という立派な書物もあるじゃない。何も書く事なんて無いわよ。 私:この立派なご本は全国版であり、当サイトは飛騨方言のみを扱っている。結論から言うと、このユニークな言い方は全国に方言多しと言えども、飛騨方言だけの言い回しのようなんだよ。 君:えっ、にわかには信じられないわ。「たわけ」は共通語につき、つまりは「たわけにする」と書いても、日本語を理解する人には通ずるわよ。つまりは、そもそもが方言ではない、というレベルじゃないの。 私:僕は極めて大真面目に飛騨方言に取り組んでいる。僕が論拠とするのは主に各種の辞典および方言学の書籍だ。若干ながらも私見を述べる事もあるが、その場合は必ず注釈を書き添える事にしている。 君:ほほほ、覚えているわよ。「若し間違っていたら、ごめんね」の常套句よね。 私:そうだ。じゃあ、ちょいと当サイトを全文検索してみよう。・・ふむふむ、2309ファイル中、16個に使用しているね。意外と少ないね。百回以上、使ったような気がしていたけど、たったの16回。逆に、すごいね、君は。いやあ、文章をきちんと読んでくれていたのか。あらためて例を申し上げたい。 君:ところで語彙のコーナーだから、若しかして飛騨方言には「たわけ」に関連した語彙が沢山あるの?また、全国にも。全国の事はお書きにならないほうがいいわよ。「全国アホ・バカ分布考」に書き尽くされているのでしょうから。 私:ははは、そのご意見は半分当たっているだけだな。実は飛騨方言において「愚か者」を意味する単語は「たあけ」一個だけなんだ。土田辞書その他を調査した。つまり方言量は1。もっとも、意味を強めて「おおだあけ」「くそだあけ」という事もある。一方、全国的には驚くなかれ「たあけ」を使うのは飛騨地方のみ。根拠は小学館日本方言大辞典全三巻、語数20万、全国の方言語彙を渉猟できる第一級資料だ。ただし日本は広い、思わぬ地方で実は「たあけ」が話されている可能性もあるでしょう。「たわけ」となると話は別、共通語であり、国語辞典に記載されている言葉である以上、日本人なら誰が話してもおかしくない。ただし「愚か者」を意味する方言は上記辞典には数百も記載されている、「あほ・ばか・たあけ」はほんの一部の語彙だ。 君:でも「たあけ・たわけ」は際どい音韻の差だから、「たあけ」が飛騨のみで話されているなどと、あまり大げさに書かないほうがいいわよ。 私:そうだね。ただし、「たあけにする」という構文だけは違う。飛騨独特の言い回しというわけだ。私なんか子供のころから何気なく使っていた言葉だがね。 君:ほほほ、わかるわよ。どうせあなたの事だから「親をたあけにする」「先生をたあけにする」「お寺さんをたあけにする」のような言い回し、つまりは「目上をたあけにする」日本語だったのでしょうね。 私:俺ってマセガキだったからなぁ。確かによく使っていた。その私が今では孫に「たあけにされて」いる。 君:ほほほ、具体的にお願いね。 私:三歳になる孫だが、トーマスの機関車が全種類スラスラと言える。トミカの車もスラスラ言える。新幹線の全車両名がスラスラ言える。私は覚えようとしても直ぐに忘れてしまうんだ。 君:しょうがないわよ。人間、還暦を過ぎると、ああ・歳をとったな、と思うのよね。 私:孫にそういわれてうれしい面もある。子供からは認知症の始まりだと烙印を押されてしまったがね。 君:でも、こうやって一生懸命、文章を書いているじゃない。 私:それはとても良いご指摘だ。認知症・痴呆は大きく二つに分かれ、ひとつは脳血管性、もうひとつはアルツハイマー。67になってしまった僕はどうも脳血管性痴呆が始まったらしい。 君:似たような病状じゃないの。 私:とんでもない。全然違う。脳血管性とは脳動脈硬化により微小な動脈が閉塞、つまりはごく少数の脳細胞が死ぬ病気だ。つまりはその他の場所は健全、微小脳梗塞とも言う。アルツハイマーとは簡単に一言、アミロイドという物質が脳全体にたまってくる病気で、脳血管性よりは悪性。脳血管性は absent minded professor という言葉に表されるように、まだら痴呆とも言う。例え晩年でも自分の専門分野では驚くべき才能を発揮するが日常生活はからきし駄目というような患者様だね。アルツハイマーは幻視幻聴が特徴でいずれ人格崩壊、宗教心が失われる。僕は今のところ、教行信証や源氏がなんとか読めているよ。 (その昔、リカちゃんで遊んだかも知れない)君:あなたはまだお仕事もあるし、方言も楽しそうね。いい事だわ。ただし、要はトーマスも新幹線も興味が無いのね。ほほほ |
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