大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

名古屋コーチンと飛騨牛をくってまう

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くってまう、は飛騨方言で、食べてしまう、という意味です。 蛇足ながら日葡辞書には、しまう(了う、終う)、について、なし終える、終了する、という意味で記載があります。 ところが関西方言及び尾張方言では、〜てしまう、が、〜てまう、という言い回しになり、 飛騨方言もこの影響で、〜てまう表現になります。 ただしアクセントは関西が上がり調子なのに、一方、(★)名古屋と飛騨は下がり調子で、正反対です。 別稿の 飛騨方言における(てまう)表現、大阪方言との対比検討 を参考にどうぞ。東京では、〜てまう、は用いられません。

さて名古屋と飛騨が同一であり関西と明らかに異なるという観点のもうひとつの 話題があります。それは、幻の方言東西境界線の通りですが、 動詞連用形が関西ではウ音便であるのに対して(食いた=>くうた)、 (★★)名古屋と飛騨は促音便である点です(食いた=>くった)。

従ってくうてまう、といえば大阪方言であり、くってしまう、といえば東京語 で決まりです。そのあいの子の言い回し・くってまう(★+★★)、 しかもアクセントも全く同一●○○○、の 場合は、名古屋・飛騨の共通方言であることが明らかです。 尤も名古屋の人口は飛騨の数十倍です。 共通方言というのもおこがましい、飛騨方言はかなり強烈に名古屋方言の影響を受けているとでも 言うべきでしょう。

ところで別稿の(大西佐七老夫婦のドタバタ温泉旅行) を読んでみても、あらあら、動詞の連用形の記載も、 名古屋方言の代表的言い回し・てまう表現もありませんでした。 ドタバタ温泉旅行記はひたすらに共通品詞を拾っただけのものなのでした。

やはり、このドタバタ温泉旅行記には 佐七が間違えて生まれも育ちも名古屋の家内の大好物・名古屋コーチンを間違えてくってまった、 それに腹をたてた家内は生まれも育ちも飛騨の私の大好物・飛騨牛をくってまった、と結ぶべきでしょう。

さてただ今、くってまうをネット検索しましたところ、 たったの数十件のみでした。希少価値の言葉です。情報発信地が特定できた記事は すべて名古屋からの発信でした。ブログ記事が実に多かったのですが、 やはり皆さん、何かをくってまうと(=食べてしまうと)つい日記に書きたくなるのですね。

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