飛騨方言で準備を、やわい、準備するを、やわう、というのですが、
ネット検索しますと凡そ数百件しかヒットせず、極めて稀なことばの
ようです。語源は不明ですが古語動詞・やわす、ではないかと
筆者なりに考えます。不祥辞書・やわい、やわう、歴史考察なども
ご参考までに。
本稿では言語圏について考察しますが、上記ネット検索の結果を
信ずる限りは岐阜県においてのみ話されている言葉です。
大半の発信が飛騨方言サイト、ないしBBS、あるいは
飛騨出身者のブログ、ですが、郡上の方言サイトからも複数発信があり、
また加子母方言サイトからも複数、福岡町からの発信もありました。
総括しますと飛騨及びその周辺地域です。平野部では話されていません。
大胆に推察しますと、飛騨で発生して郡上及び東濃へ伝播した
という事ではないでしょうか。富山平野、濃尾平野には無い言葉で有ることから
生活圏、婚姻圏、等々を共にする岐阜県山間部で話されている
ことばが、やわい・やわう、なのです。
もとより飛騨地方で話されていた原始日本語の語彙のひとつとして
自然発生したのではないでしょう。やはり古語動詞・やわす、
が飛騨にもたらされたのです。方言周圏論ではなく、
飛騨工が直接、飛騨にもたらしたのでしょう。
またその成立はサ行イ音便とア行促音便が関係する事も別稿に
論述しました。しかも尚、既に京都ですら話されていない言葉
ですから極めて古い時代、つまり平安初期に飛騨にもたらされた可能性すらあります。
たとえば、けなるい(=うらやましい)、という言葉を考えてみてください。
現在も話される代表的な京言葉です。のみならず全国各地の方言となっています。
日葡辞書にも記載があり、室町時代の共通語だったのです。
室町時代まで京都で話されていた言葉は全国の方言に
なっている可能性があります。
ところが、やわう、の分布は飛騨および周辺のみです。
つまりは、京の都では鎌倉〜室町の中世には既に、やわす、は
話されなくなったのでしょう。さてひとつの言葉・やわう、にも
一千年の歴史が有ると言うことは、やはり飛騨人はこの言葉が
余程好きだからなのですね。
また飛騨辺りは流石に田舎だから一千年たってもせいぜい郡上、
東濃位にしか言葉が伝わらなかったという事で、
しゃみしゃっきり。
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