大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

やわう・飛騨方言

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やわう、は準備する、支度する、と言う意味の動詞です。 名詞形がやわい、で、冬支度の事を、飛騨方言で、ふゆやわい、と言います。 郡上市立北濃小学校からの発信がありました。 白鳥弁などの発信もあり、 飛騨地方、郡上地方に特有な方言のようです。

語源についてはネット情報がなく、あくまでも推量ですが、実は古語動詞に、やわす(和す)、があります。 意味は、やわらかにする、やわらげる、平穏にする、という意味になります。 万葉集20、まつろへぬ人をもやわし、つまりは服従しようとしない人をも平穏にして、という事ですから、 硬いものをあれこれ手を加え、工夫して、やわらかくする、というのが古語動詞、やわす、です。 万葉集の言いは、頑なで服従しようとしない人の心をやわらげて、という意味になります。 従って、やわい、は、やわす事、つまりは、癒し、などの意味になります。

ふゆやわい、という言葉を考えて見ましょう。飛騨は今こそ雪は多くふらね、昔は大変に厳しいものでした。 厳冬の冬で、雪、氷に閉ざされた冬です。これを何とか少しでも暖かく平穏にしよう、とあれこれ手を加え、 工夫するのが、ふゆやわい、です。まさに古語動詞、冬をやわ(和)す事を指し示しています。

従って、何かほっとした生活を作るためにあれこれ、準備する事を、やわう、というように 意味が拡大解釈されてきたと考えますと、自然に、祭りのやわい、という言葉が理解できます。 厳しい農山村の毎日の仕事をやわ(和)す楽しみといえば、正月、お盆、村祭り、です。 つまりは、普段をやわすための、正月、お盆、村祭などによるやわい(癒し)、という事になります。

あるいは、ですからこうも考えられるのです。 やわすための準備である以上、もともとは楽しい事のための準備という事になりましょう。 ですから、うーん、いくさのやわい、裁判のやわい、など、どうもこれは本来の飛騨方言の用法では ないと佐七は考えます。さあ、佐七も次の飛騨言葉の執筆の"やわい"にかからなくっちゃ。待っててね。
参考
やわい
飛騨方言やわう、の語源に関して歴史的観点からの一考察
飛騨方言やわうの分布に関する一考察

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