別稿に飛騨萩原に、あさんず、という語彙がある事をお書きしました。(ここ)
本日は昼休みに更に電話による聞き取り調査をしてみました。電話先は下呂市役所、あさんず会館、JA萩原、の三か所です。確認できた事は、あさんず、の音韻・アクセントですが、当然ながら尾高〇●●●です。また例文として体言止めの文章、例えば『きょういったところはあさんず。』のような文章でも尾高になるのです。裏話ですが、私が『久々野の出身で可児で開業している町医者で飛騨の音韻に興味があるので電話させていただきました』、と電話でお伝えしたところえっ、左様でございますか。実は私、飛騨の出身じゃないんですよ。このまま電話を切らずにお待ちください。生まれも育ちも萩原、根っからの飛騨の人間がいますので、それを呼んできます。 というような次第で、得られた情報は確かでした。
それにしても例えば日本人なら誰でも知っている苗字・速水、これの音韻は、はやみ●〇〇、となってつまりは頭高です。どうして浅水あさみずは、あさみ●〇〇、とならなかったのでしょう。面白いと思いませんか。でもこれも少し考えてみればすぐにわかる事。苗字・速水は西日本に多いのです。大阪・奈良・滋賀です。つまりは形容詞・速いのアクセントは内輪(京阪式)、つまりは速い水●〇〇〇〇、ならば末語が短縮されて、はやみ●〇〇、になるという理屈です。ところが飛騨萩原はじめ飛騨全体は中輪(東京式)なので、あさい〇●●、のアクセントで決まりという事で、あさい〇●●みず〇●の複合語はあさいみず〇●●〇●が転じて、あさみず〇●●●、と変化つまりは尾高アクセント語化して、これが撥音便化すれば、あさんず〇●●●、となるわけで、正確に日本語の音韻則に従っているという事が、どなた様もご理解いただけると思います。
結論ですが、屁理屈のようですが、これが学問、しかも本日は都竹都年雄先生を見習い、実際に現地へ電話をしてみて調査した結果を皆様にお伝えできたという事で、ちょっぴりですが幸せな気分です。速水と浅水の音韻変化の違いから日本語、つまりは方言学上の大命題・東西アクセント対立、というものが見えてくるのです。
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