大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
すてんしょ |
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佐七:有斐会報を読まれましたか。 典江:ええ、先人の修学旅行記ですね。JR高山線開通前の。表日本に出るには中央線を目指して中津川まで歩いたという。 佐七:そうです。そしてその後、高山線が部分開通して飛騨金山まで歩いたのです。昭和初期まで、つまりはついこのあいだまで。 典江:かくして飛騨方言が成立したのですね。 佐七:ははは、その通り。鉄道と方言です。井上史雄先生が泣いて喜ばれるでしょう。さて、すてんしょ(土田吉左衛門、飛騨のことば)、という飛騨方言があります。使いますか? 典江:いいえ、聞いた事も。 佐七:ははは、私も聞いた事はありません。高山線が全通したのが昭和九年、高山駅を、すてんしょ、と言ったのですよ。 典江:ふふふ、わかったわ。高山ステーションと当初言われていたのに、ものめずらしさに人が押し寄せて、飛騨の人達は自然発生的に、すてんしょ、と言い出したのですね。 佐七:おっしゃる通り。聞き間違えが発端ですね。過剰修正(ある語形を方言形と誤解し、さらなる方言を形成する事)の結果でしょうね。 典江:ふふふ、わかりますわ。お祭りでは、お旅所(おたびしょ)、といいますもの。他には、療養所など。 佐七:そうですね。診療所も、飛騨の老人では、しんりょうしょ、という人がいますよ。もっとも大西村の老人、つまりは私の母ですが。ははは。現役の言葉といってもいいでしょう。 典江:すてんしょ、と言い切るのですから日本語そのもの、つまりは漢字表記できる言葉、と勘違いしていたという事でしょうね。 佐七:うーん、いい事おっしゃるなあ。その通り、例えば州転所、衆転所、なんていう表記はどうですかい。前者は国から国へ、つまりは異国へ旅たつ場所、そして後者は人々がいきかう場所。 典江:わたしまけましたわ。頭から読んでも尻から読んでも山本山。今日は”故郷の訛り懐かし、停車場の”というテーマだったのね。 |
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