大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
飛騨方言・ぐんがつむ、の語源発見物語 |
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飛騨方言に、ぐんがつむ、という言い回しがあります。将棋の言葉でいう、銀が詰む、と同じ意味・同じ用法・同じアクセントです。ですから筆者には、この俚言の言い回しはどう考えてみても、銀が詰む、が訛った言葉としか考えられません。答えをいきなりお教えしますと、なんだそうかと頭が全てスッキリして銀が詰んでしまった方々よ、さようなら。
では何故、筆者が、銀が詰む、に気づいたかを以下に克明にお書きしましょう。筆者の飛騨俚言の語源探しも二年経ちました。経験と勘がほんの少しですが蓄積して参りました。 さて筆者は実は以前からこの言葉を、変わった言い回しだなあ、飛騨の人が何気なく使っているが飛騨地方以外では絶対に通じないはずだ、飛騨の俚言ではないか、と直感していたのです。意味は、守備は上々仕上げをごろうじろと言う事、つまりここまで準備すればもう大丈夫という事です。 例文は何十でも作れます。しかし私の興味は語源のみ。さて飛騨方言とて日本語です。つまり品詞分解しますと、 ぐん(何かが訛った体言)+主語を示す格助詞・が+つむ(なにかの用言の終止形)である事は書かずもがな。しかしながら体言・ぐん、からあれこれ考えてもすぐに行き詰ります(ぐんがつみませぬ、とほほ)。また、動詞・つむ、ですが、積む・摘む・詰む・抓む、等々ありますがざあっとあたってみてもだめでした(やはりぐんがつみませぬ、とほほ)。 こうなって来ると人間はどうしてもペシミストになります。悪いほうへ考えてしまいます。つまりひょっとしたら、体言ぐん・用言つむ、という飛騨方言は、語源から何かの音が脱落した品詞の組み合わせかしら、つまり幻の脱落言葉探し(しかも二つも!絶望的)、複数辞書の全ての体言・用言をあたってみないと語源に到達できないのでは、とつい思ってしまいます。 ところで最近ですが、飛騨方言のアクセントの歴史という事に少し興味が沸いてきました。(筆者なりに気づく事を発信し続けたいと思っています。) そしてまずは筆者にとって飛騨方言のアクセントについての最大のなぞは 飛騨は明らかに東京よりも京都に近く、しかも方言の東西分布の境界線・糸魚川一浜名湖ラインの京都側に位置する。それに律令時代に実に四万人もの飛騨工(といっても実は飛騨の各村々の庶民)が飛騨と都の間を行き来しており、飛騨方言はまさに蝸牛考・方言周圏論のショウルームになっている。つまりは飛騨方言の語彙は平安時代の京言葉である。それにもかかわらず何故、飛騨方言のアクセントは純東京式なのであろうか。という素朴な疑問です。言い換えれば、飛騨は語彙・文法を都から輸入し近畿圏であるにも関わらず京阪式アクセントを輸入しなかったのは何故か、という疑問です。 そして発想の転換、前述のペシミストを止めるのです。つまり、飛騨の人間ならアクセントに絶対の自信を持て、東京のアクセントとぴったり一致しているはず、東京凡太に、ちみはちおんわりぃいね、なんて言わせるものか、と言う事で飛騨の人間というのは妙に楽観的になれます。今回の語源探しも実はそうでした。ありがたや。 そして、ぐんがつむ、のアクセントですが、用言つむ、は●○です。となりますと、語源探しは国語辞典にあります上記の用言中、自動的に、詰む、に絞られてしまいます。 やっと本題ですが、本日生まれて初めてアクセント辞典なるものを買いました。自分自身を勇気付けて、ぐんがつむ、の語源の糸口探しの目的で買ったのです。つむ及びその派生語のアクセントを渉猟するにつけ、やはりこの飛騨俚言は、詰む、という動詞に間違いない気がします。 さて詰め合わせセット、等々日頃慣れ親しんでいる言葉ですが、流石に、用言・詰む、は日常会話であまり用いません。ですから、うーん、詰む、の用法ってのはどんなのがあるか、これが更なる疑問です。そこに語源解明の糸口があろう、と考えたのです。 となりますと実はこれが言いたい、すかさずネット検索するに限ります。終止形の文例を検索したければ(ここがミソ)"詰む。"を用います。ところが将棋のサイトばかり、そしてやがて飛び込んで来た言葉が、"銀が詰む。"語源みつけたり!!!実は思わず叫んでしまいました。 もっとも、私は将棋があまり詳しくなくて、当ネット記事を反復して読んで、まずは将棋好きの皆さんが当然のようにお使いになるこの言葉の意味を吟味せねばなりません。銀が詰む、とは、つまりはもう二手・角金で王手を意味し、つまりは必勝に近い事を意味するようです。蛇足ながら、金が詰む、と言う事は王手を意味し、つまりは勝利が確定した、という意味と考えて間違いなさそうです。そして飛騨俚言・ぐんがつむ、とは、金が詰むというよりは銀が詰む、という意味なのです。 私は正直いってあまり将棋はせず、その定石も言い回しもよく知りません。でも今回のネット検索遊びで、銀が詰む・金が詰む、という言い回しの意味がかなり分かったような気がします。 佐七は更に言いたい、賢明な読者の方はお気づきですね。金が詰む、は飛騨俚言・ぐんがつむ、の語源ではありません。カ行がガ行になりイ列がウ列になったのかしら(金説)と考える必要はありません。イ列がウ列になった(銀説)、たったそれだけの事でしょう。しゃみしゃっきり。 おまけ 将棋のミニ歴史 一説には遺唐使・吉備真備が中国から持ち帰った。しかしむしろ、タイ将棋との親近性と中国将棋の駒名比較から、インド−東南アジア−中国を経て、日本に伝わったとする説が有力。平安時代には日本の遊びであった。(天童市商工観光課) |
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