大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

ひね(3)(=古・陳、古い事)

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私:ひさびさ、飛騨方言ひね、の語源について考えよう。
君:既に記載の通り、語源は「ひ干」+「いな稲」でいいんじゃないの。
私:ああ。でも直感とか、意味がよく合うとかいう、いわゆる素人の語源学ではなく、国語の歴史の観点からお伝えしたい。
君:語史ね。
私:というか、昔からの好事家の諸説の紹介という事。結論から言うと、ひね、の語源は不明。「ひ干」+「いな稲」の説は俗語考・上方語源辞典、前田勇、に出てくる。
君:上方語源辞典って近代あるいは現代の出版じゃないの。
私:うん、実は現代の書。東京堂出版, 1965.5。
君:駄目よ。古い書物でなきゃ。
私:その通り。ひね、の語源について他の説としては、★へいね経稲(俗語考・上方語源辞典、前田勇)、★ふるめ古米(言元梯、大石千引 著、天保5[1834])、★ひさなれ久馴(名言通)天保六刊(1835)、★ふりなれ旧馴(名語記、文永5年(1268))。
君:なるほど、最も古いのが鎌倉時代の名語記だけれど、こじつけすぎで有名な書。上方語源辞典に至っては両論併記。つまりは、語源は不明です、とでも書いていたほうが無難ね。
私:その通りだね。僕としては、ざっくばらんにお話しすると、ひな鄙からの転じゃないのかな。都会は新しい、田舎は古臭い。
君:一理が無きにしも非ず。ただし、文献はないのでしょ。
私:ないね。ひね、の言葉は京大本・1571(元亀2)年の運歩色葉集(うんぽいろはしゅう)に出てくる。つまりは和語ではなく中世語。
君:でも、鎌倉の名語記に既に出てくるのでしょ。
私:名語記は論外。百歩譲って、ひね、は鎌倉以降の中世の言葉。
君:飛騨方言をこととはば、ひなには古き言葉・ひね、残れり。ほほほ

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