大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

にお2(=藁の山)

戻る

私:にお堆についてお書きした。少し続きを。
君:語源がはっきりしない以上、それ以上の考察は不毛よ。
私:確かに。各種の音韻変化がある事も既述だ。多義語という事で加筆したい。
君:どうぞ。
私:藁を積み上げたもの、というのが本来の意味だ。方言学ではこれがたちまちに多義語になる。
君:例えば飛騨方言に限って、というお話ね。
私:そう。稲にお、藁にお、草にお。稲・藁は同意語的だね。刈ったばかりの稲を積み上げるわけではない。つまりは草にお、が問題。これは干し草。牛の冬季用の餌。つまりは藁であれ草であれ、何か有機物を屋外に積み上げる方法、という意味で一般名詞での意味の拡張がある。また全国各地の方言をみると、にお、が稲そのものを意味する異義語の言葉になっている例もみられる。それと、新たな収穫があった。飛州志に記載があった。つまりはこの飛騨方言は江戸では珍しい言葉ととらえられたという事。
君:江戸ではなんといっていたの。
私:江戸ではなく、当時、全国的には、稲室、あいるいは、稲むろ、と言われていたらしい。
君:その言葉は古語辞典にあるんじゃないのかしら。
私:そう。いい感しているね。いなむら稲叢がある。但し、稲そのものを積み上げたもののようだが。
君:脱穀しないで積み上げちゃうのね。
私:うん。ほんのひと時という事だろうね。乾かして脱穀しなきゃね。
君:なにはともあれ、飛州志を経て古語にまでたどり着けたのは収穫。にお、が近代語ではなく、近世語以前の言葉である事もこれで確認できたわね。 ほほほ

ページ先頭に戻る