大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

究極の飛騨方言・川柳気結折句(キムスビオリク)

このサイトを立ち上げていくつか下手な俳句を飛騨方言で詠んでみましたが、 勿論、動機は飛騨方言+俳句でネット検索しても情報が皆無に近かったためです。 当初から、川柳を詠んでもいいかなあ、と思っていたのですが それにしても川柳ですか、躊躇します、そんな才能があるわけない。 ところが「川柳道場、雑俳の手引き」などをキーワードにネット検索しますと、私のような素人が始められるジャンルがありました。
"折句とは・・五・七・五それぞれの頭1文字目を指定し、句を作ります。 人名や地名、季節の風物を折り込めるので人気があります。・・ 気結折句は「3文字」にちなんだ内容で川柳をつくります。・・"
では不肖・佐七も飛騨方言で気結折句を詠んでみましょう、世界初の飛騨方言の川柳という事に なるのでしょうか。清濁随意と言う事でお願いしますネ。 また当サイトは同字折句も掲載しています。
本文
題 深み
例えば 蛙飛ぶ池はふかみの折句なり(柳多留・六) という古川柳があるようで、 芭蕉の 古池や蛙飛び込む水の音 は、句の頭を拾って 読むとフカミとなるというのです。 「古池や」の句に深みというのは大発見、 実は 一流の川柳・気結折句であったというわけです。 ふかみを詠む以上、何か水に関係した句、あるいはとても深い意味のメタファーで なくては笑っていただけないでしょうね。

古温泉 がおろ飛び込む? 見れば猿 飛騨方言で河童の事をがおろ、といいます。奥飛騨温泉郷の古ぼけた温泉にたどり着いた、 どぶんっと何やらが飛び込む水音、もしや河童だったか、いや実は猿だった、という意味 ですが、笑えないですねえ、佐七自身が。世界初の飛騨方言折句かもしれないのにね。

古温泉 があらんべかろ? 見よ猿ぼぼ! 飛騨方言でかっぱの子供の事をがあらんべ、といいますが、 かわら+わらべ、が訛った言葉でしょう。 猿ぼぼというのは猿の赤ちゃんという飛騨方言ですね。 古ぼけた温泉に何やらかわいらしい影が、 もしや河童の赤ちゃんか、いや実は猿の赤ちゃんだった、という意味 です。うーん、これは笑えたぞ。佐七もやるね。

ぶんぶ飲み かぶち捕まえ みずあべす ぶんぶ、は飛騨方言で水です。幼児語といってもいいでしょう。 かぶち、とは川魚の一種です。水浴びの事を飛騨方言ではみずあべ、というのです。 ぶんぶ飲み、とは夢中で川遊びをして思わず川の水を飲んでしまうという意味です。
題 浮気
飛騨方言で男女の機微を詠んでみましょう。

うたていさ わたしにあんたが 気を使い 共通語訳ですが、 恐縮しますわ、妻の私に夫のあなたが気を使ってくださるなんて、という意味です。 惚れた女房より惚れられ女房という事ですねえ。 恋愛の成就つまり結婚に至るには、男は押しの一手、などといいますがとんでもない、男はぼうっと待っていたほうがいい、 女こそ押しの一手、という意味でもありましょう。

うっつくしょう 忘れてまえよ 気にせんな 共通語訳ですが、 きれいさっぱりと忘れてしまいなさい 気にするな、です。 注意が必要なのはサ変動詞・気にする、ですが飛騨方言で、気にせる、です。 気にせん、は、気にしない、という意味です。禁止の意味の終助詞・な、がサ変「せる」終止形否定形に接続しますと二重否定は肯定という意味かと若しや皆様、思われましょう。 違います。二重否定だが意味は否定という特殊な用法ではありません。撥音便です。 そんな事はどうでもいいとして、昔、てなもんやさんどがさ、というテレビ番組がありました。 その主題歌の二番に確か、 ・・南風吹きゃ花さえ咲くに♪ 可愛いあの子は薄情け♪おいら旅人一本刀♪(おひけなさんせ、おひけなすって) くやしまぎれにいうのじゃないが♪あんな女はざらにある♪(唄は藤田まことさん)・・ というのがありましたね。
題 まつり
飛騨方言でまつりを詠んでみましょう。 てなもんやさんどがさ、というテレビ番組がありました。 その主題歌の三番目ですが、 ・・捨てた故郷にゃ未練はないが♪ わすれられりょうか母の顔♪おいら旅人一本刀♪(おひけなさんせ、おひけなすって) まつりばやしをしみじみ聞いて♪おとこ泣きする事もある♪(唄は藤田まことさん)・・ というのがありました。

まつりの夜 つくなってまい リトマス紙 ( PG-13 ) 飛騨方言動詞・つくなる、は重なり合うという意味です。 〜てしまい、の飛騨方言表現・てまい、がこの動詞の連用形に接続しますと、 折り重なってしまい、という意味になります。リトマス紙というのは 赤くなったり青くなったりしてペーハーを示す試験紙ですが、人の顔が赤くなったり青くなったり する事の比ゆに用いられます。句意ですが、祭りというのは若い男女にとっても大事な社交のチャンスです。 好きな人がいれば声をかければよいでしょう、夜になれば相手方の家に推しかけても許されるでしょう、 二人で逢引しても黙認というか公認されるでしょう。

句意ですが、恥ずかしながら佐七の思い出を川柳に詠んでみました。 私の場合ですが、つくなってまう、とはあの子の手をしっかりと握った事でした。 佐七の顔は真っ赤になりリトマス的には完全に強酸性でした。 おまけですが PG-13 というのは parental guidance 13 (years old) と いう事でこの表示がある映画は十三才以下の子供は両親といっしょなら見てもよろしい、 よい子は一人で見てはいけません、という意味です。 どうか小学生がひとりでこの句を見ませんように。(なら書くな)しゃみしゃっきり。

ませんぼを ついにかわずに 理性ゼロ ませんぼ、というのは馬の通せん棒、という事 です。厩の柵の事を言います。この柵をする事をかう、といい、 逆にはずす事をかわない、というのですが、 比ゆとしては男性のズボンのジッパーをあげる(=かう)、さげっぱなし(=かわず)という意味で 用います。 つまりはこの句も実はお祭りの川柳なのですが、お祭りですから無礼講です、 飲みたいだけ飲めばよろしい、がしかし飲みすぎるとどうしても@ち小@を したくなってしまいます、まあいいやこれも無礼講だとて 事に及ぶやすっきりした途端に、手も洗わずまたまた飲み始める、語り始める、 そして肝心のませんぼに鍵をする(=飛騨方言で、かう)事を忘れてしまうのですね。 本人は知らぬが仏なれど、はたから見ると理性ゼロにみえてしまいます。

まむしとり ついにゃあへんべを リンチやぞ リンチ以外は全て飛騨方言です。直訳しますと、まむし捕りで  ついにはへびを リンチだぞ、 という事なのですがやはり村祭りを詠んだものです。 まむし捕りとは獅子舞のなかでも男獅子、つまり威勢のいい勇壮な舞の なかの曲目のひとつです。◆同じような意味でへんべとりがあります。 "高山市奥飛騨温泉郷福地に伝わる毒ヘビ伝説をもとに、 獅子が笛や太鼓にあわせ蛇(へんべ)をくわえて 舞う獅子舞がへんべとりです。 今からおよそ千年前、この地には村人を苦しめる毒ヘビがいました。 温泉療養中だった村上天皇がこれを見かね、笛や太鼓や踊りで ヘビをなだめると、暴れるのをピタリと止め、 村に平和がもどったと伝えられています。(岐阜県図書館・世界分布図センター)" ◆ところが大西村の"まむしとり"は、獅子がたったまま自分の体のノミ捕りをする、突然まむしに刺される、 アイタタと座った獅子が どういうわけか座ってノミ捕りの続きを始める(そんなことしてる場合か!!)、 そしてついでに座ってマムシを捕る、 勝ったやったぞ、獅子は首を振り振り大喜びしながら、まむしもムシャムシャ食べつつ 観衆の割れんばかりの拍手の中を歓喜の表情で退場、という 極めてブルータルな舞なのですが。

舞うあの子 つれにしたいさ りくつぬき お祭りがあると女子は稚児行列グループとして総出演です。 総出演はさておき稚児行列のリーダーはむしろ巫女・シャーマンですのでなんといってもお祭りでは神主さんの次に偉い位なんですよ。 中学三年生あたりの方がお二人大抜擢される事が多いのではないかと思いますが、 お化粧して巫女の舞いをされますと、何とも早もう少年・佐七も女性を感じてしまうのですね。 飛騨方言・つれ、というのはワイフ・生涯の伴侶、うーん、今あんなにも華麗に巫女の舞をしている@@ちゃんと将来、結婚できたらいいなあ、 なんてついつい思ってしまうのですよね。このようなほとばしる情動は抑えられるものではありません、つまり理屈ぬき。

撒くもちを つくばって取る りきまずに お祭りといえば、餅撒きですね。 皆さんキャアキャア言いながら、何とかひとつでもキャッチしようと。 福をつかみたいというささやかな庶民の気持ちのあらわれですね。 中には傘を広げて天地を逆にしてパラボラアンテナが宇宙の電波を キャッチする要領でもちを取ろうとする方があります。 明らかに反則技です。ルール違反です。退場させるべきでしょう。 まあ、ええわい欲しい人がはりこんで(=張り切って)つかみゃあ、と ござをしいて、つくばって(正座して)いる方の所へ餅がポトリと転がり込んできた、 あらごちそうさん、という川柳でした。