別稿・飛騨方言四段動詞・かう、の語源に関する一考察
に(鍵を)かう、の語誌は古語動詞・かふ、のハ行転呼音か、とお書きしました。
今、ちょいと時間がありますので古語辞典を
ひっぱって、イロハ四十八文字+ふ、の古語動詞が
幾つあってそれが飛騨方言とどれだけ一致しているか
実験してみましょう。
一杯やりながらの作業ですから、若し見落としがあったらご容赦を。
さて・・・
古語 飛騨
辞典 方言 結果
あふ 合う 一致
言ふ 言う 一致
負ふ 負う 一致
追ふ 追う 一致
買ふ 買う 一致
交ふ かう 一致 例 飛び交う
換ふ 換える 一致
飼ふ 飼う 一致
請ふ 請う 一致
恋ふ 恋う 一致
媚ぶ 媚びる 一致
障ふ さしつかえる 不一致
強ふ 強いる 不一致
癈ふ 該当無し 不一致
誣ふ 誣いる 不一致
窄ぶ すぼめる 不一致
総ぶ 該当無し 不一致
統ぶ 該当無し 不一致
添う そう 一致
副う そう 一致
食ぶ 食べる 不一致
耐ふ 耐える 不一致
堪ふ 堪える 不一致
賜ぶ 賜まう 一致
給ぶ 給う 一致
禿ぶ 該当無し 不一致 読み ちぶ
禿ぶ 該当無し 不一致 読み つぶ
問ふ 問う 一致
訪ふ 訪う 一致
飛ぶ 飛ぶ 一致
萎ふ 萎える 不一致
綯ふ 綯う 一致
並ぶ 並ぶ 一致
靡ぶ なびかせる 不一致
並ぶ 並べる 不一致
鈍ぶ にばむ 不一致 にび色になる
縫ふ 縫う 一致
ねぶ ふける 不一致
伸ぶ のびる 一致
延ぶ 延びる 一致
述ぶ 述べる 一致
這ふ 這う 一致
延ふ 張り渡す 一致
心をよせる 一致
舞ふ 舞う 一致
思ふ おもう 一致
呼ぶ 呼ぶ 一致
わぶ 詫びる 一致
結論ですが、うーむ、二拍の動詞もがんばってるなあ、
と言う事ですね。
贔屓目にみれば、大半の動詞が古代からずうっと同じ。
飛騨方言もがんばってるなあ、という事ではなくて
実は、
日本語もがんばってるな
という事ですね。
考えてみれば当たり前の事なのでしょう。
飛騨方言、というか東京語というか、畢竟、日本語はモーラ方言です。
日本語(の代表方言たる飛騨方言・中部地方のど真ん中)はモーラなのですよねえ、奈良時代も今も。
つまりは動詞が二拍というのは現代語日本語動詞の究極の姿ですから
何世紀もの以前から変わりようがなかった、という
事なのですよねえ。
やはり、現代語の飛騨方言の、
鍵をかう、という言い回しは、万葉集の言葉・かふ・
交ふ・他ハ下二・交差させる、という動詞の
時代から、つまりは一千年以上も、ほとんど変わっていないのでは
ないでしょうかねえ。
上記の動詞群はちょいとハ行転呼音が加わっただけなんやさ。
やはり、鍵をかうの語源は交ふかもしんない、
思い込んだら命がけ、いつもの佐七節でした。
しゃみしゃっきり。