別稿に、助動詞特殊型・う、は
上古の推量の助動詞・む、が撥音便・ん、になり、
近世に、う、に変化し、これが五段活用を生み、
飛騨方言では撥音便・ん、に留まった為に四段活用である
事をお書きしました。
その一方、実は飛騨方言では、
〜むとすも、が、〜ず、にも更なる変化をして
現在に至っています。
これも飛騨方言が四段に留まっている理由です。
例えば、
上代・中央飛騨 四段 読まむとす
上代・中央飛騨 四段 読まむとすも
中世・中央飛騨 四段 読まんとす
中世・中央飛騨 四段 読まんとすも
中世・中央 四段 読まうとす
中世・飛騨 四段 読まんずも
中世・飛騨 四段 読まんず
近世・中央 五段 読もうとする
近世・中央 五段 読もうとした
近世・中央 五段 読もうとするでしょう
近世・中央 五段 読もうとしたでしょう
近世・飛騨 四段 読まずも −>読むでしょう
近世・飛騨 四段 読まず −>読むでしょう
近世・飛騨 四段 読ままいも −>読まないでしょう
流石に飛騨方言では、読まずとする・読まずとした、とは
言いません。その代わりに、
読まずと思う
読まずと考える
読まずとしよる
などの言い方が可能です。
次いで飛騨方言では、書こうにも書けない、という文を、
書かずと思っても書けん
書かずと考えても書けん
書かずとしようるが、なかなか書けん
などの言い方で言い換え可能です。
次いでですから四段以外も記載しますが、
やはり全て、未然形の接続です。
上一 見る 見ず 見ずも
下一 寝る 寝ず 寝ずも
カ変 くる こず こずも
サ変 せる せず せずも