皆さん、五流俳人の佐七です。うり、なす、共に夏の季語のようです。従って季語が二つあるこの句は失格、よい子の皆さんは決してまねをしないでください。
さて飛騨方言で、だしかんぞ、というのは、らちがあかぬぞ、ということばが訛ったものです。平たくいえば、だめだぞ、という意味です。今、だしかんぞ、をキーワードにネット検索しましたが、ほぼ全て飛騨からの発信でした。代表的飛騨方言といえましょう。
そして、だちかん、をキーワードにネット検索しますと使用圏は拡大します。理屈は簡単、こうです。らちあかぬ>らちかん>だちかん>だしかん と言葉が次第に変化してきたと言う事で、だちかん、と発音する地方はより古い言葉が温存されている、という事で、らちがあかぬの最新型が、だしかん、なのです。全国広しといえども飛騨地方のみが、らちあかぬ、の言い方の最先端を走っている、というわけです。ただし、飛騨地方は、少数ながら、だちかん、を話す方もおみえのようで、厳密にはだしかん、と、だちかん、が混在する地域です。これについては、だしかんを参考にしてみてください。
実は飛騨他方では、さらに最々先端のことばもすでに話されてます。だっしゃん、です。なんとたった二音節、究極の"らちあかぬ"です。
さてここからが本題、三十年も昔の話でしょうか、たしかカゴメ野菜ジュースのテレビ宣伝で、田舎のおばさんが畑の真ん中で、野菜をたべにゃだしかんぞ、とテレビを通じて都会に出た息子に伝えているコマーシャルがありました。
なにせテレビで放映されているものですから、当時私も都会に出ていてそれを見ました。そして、ほう、飛騨方言じゃないか、と思った次第です。元祖・方言キャッチコピーと私は受け止めました。次いで迎えた正月に帰省すると、なんとロケが私の村の隣村で、そしてその都会に出た息子というのも私の知人であると知ったのです。うそのようなホントの話です。信じてください。
重要な点ですが、終助詞・ぞ、は男性が用います。女性が話す場合は、だしかんよ、だしかんわ、だしかんえな、などになり、こう話しますと飛騨方言としてはやさしい響きになります。
言いかえますと、だしかんぞ、は命令調、おどかし調、威高々調、です。がしかし、物事には全て例外があり、飛騨の母親が息子にしゃべる言葉がつい、だしかんぞ、になっても不思議ではありません。
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