大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 古代

和語(2)それでいいのか、小学校教育

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私:表題だが、どう思う?
君:ネットを閲覧し、初等教育で日本語の語彙の三分類(和語、漢語、外来語)を教える現況に疑問をいだいてしまった、と言う意味ね。
私:そうなんだよ。日本語のプロトタイプは和語で、中国の影響で漢語が加わり、明治文明開化あたりから外来語が増えた、位は教えてもいいと思うが、問題は中学校受験問題だ。
君:つまりは私立中高の入試問題ね。
私:そう。これが過激化の一途で、訓読があるのが和語・音読は漢語、の単純発想で作られた問題が多い。解答を見ても間違いが散見される。菊・絵は漢語、という問題以前の話。つまりは愚問に満ち溢れている。出版物も大方、そんなところだろう。
君:大きく出たわね。
私:識者のご意見を是非ともお聞きしたい。
君:そもそもが和語とは、と言う問題ね。
私:国語学を専攻する学生への講義といってもいいだろう。和語の語基には以下の十種類がある。国語学会編国語学大辞典。
  1. 自立した体言、格助詞が接続し文節を作る品詞。例 春、秋、日、月、山、川、等々
  2. 自立し凖体言になるもの、格助詞「に」か助動詞「だ」に接続し、文節を作るもの。例 いや、あはれ、まれ、おろか、等々
  3. それ自身が自立する用言で接続助詞に接続して文節を作るもの。五書類(書き、起き、受け、き来、し為)。
  4. 自立して副用言になり、それ自身が文節になるもの。例 すぐ、つい、ただ、等々。
  5. 「める」に接続し用言、「さ」に接続し体言、「げ」に接続し凖体言になるもの。例 たか高、ふか深、広、暑、寒、悲、等々。
  6. 「まる・める」に接続し用言、重畳語で副用言となるもの。例 しず、ひそ、はる、ほの、等々。
  7. 数詞の語基。ひと、ふた、み、よ、いつ、む、なな、や、ここの、と、はた。
  8. 指示代名詞こそあど
  9. 助詞や形式語との複合語である副用言。例 いかに、しかも、さぞ、かくて、等々。
  10. 擬音語・擬態語、特に重畳語。どん、かん、がく、きら、さっ、等々。

君:ほほほ、山田文法と松下文法という訳ね。つまりは大学講義。
私:その通り。
君:大学生ですら暗記も大変ね。
私:以上は和語の話題の基礎の基礎。更に漢文訓読語についても知っていないと和語を理解した事にはならないね。
君:漢文を訓読するにあたり特有な語が用いられる事ね。
私:そう。築島裕、平安時代の漢文訓読語につきての研究、昭和38、東大出版会。
君:例えば、ひとびと(和語)はトモガラ(漢文訓読語)。
私:夫だが、和語は「をとこ」、これの漢文訓読語はヲフト。やがて「おっと」。だから「おっと」は和語ではない。
君:和語でもなく漢語でもない言葉、それは漢文訓読語。ほほほ
私:定義というものがあるとすれば大陸の影響が無く古代から日本に存在した語彙が和語。
君:ただし日本語とは古来から止めどもない大陸語の影響の結果。和語の定義、和語の分類は研究者によって議論が分かれるという事なのよね。
私:山・川は和語。ただし古代の飛騨方言にこれらの和語が存在して現代に至るという証拠はひとつもない。
君:たったひとつの証拠と言えば正倉院の東大寺諷誦文稿
私:当時の飛騨方言は奈良の都の人々には聞き取りがたい言葉だった。古代の飛騨に和語は存在していなかったのかも。
君:それと日本書紀の両面宿儺伝説よね。
私:その通り。飛騨には都に対峙する豪族がいて、飛騨に独立国家とも言うべき政治があったという事。言語があった事は間違いないが、アイヌ語に近かった可能性がある。
君:ふーむ、和語について、と言う命題は中学入試ではなく大学院入試に持ってこいのようね。これに興味を抱く大学生を拾い上げようという和語教授の作戦。ほほほ

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