佐七辞書にあります動詞・おくに詳述した通りですが、
おいた、と言えば飛騨方言では、やめた、という事になります。
また完了・過去を示す助動詞・た、は飛騨方言においては
促音便では濁音化する事はないのですが(例、買ったろ、買った、買ったら)、
イ音便では濁音化するのが一般的と言えましょう(例、置いだろ、置いだ、置いだら)。
以上の前知識をもとにあるひとつの子供誘拐事件についてご説明します。
内容は犯人との電話のやり取りです。被害者家族に変わって私・古畑佐七郎が
子供の父親に成りすまします。
犯人:身代金はおいたか?
古畑:どういう意味ですか。おっしゃる事は実は私どもの飛騨方言では
指定の場所に置いたのか、という意味にも
身代金の受け渡しははやめてしまったのか、という意味にも
なるのです。指定の場所にまちがいなく置きました。
お願いです、子供だけは返してください。
犯人:身代金はおいだか?
古畑:あれえ、なんやな、あんた飛騨の人かな。
言葉でわかるさ。あんた今、飛騨方言いわはったもなあ。
勿論、置いどいださ。指定の場所にまちがいのうなあ。
身代金の受け渡しおいでまうなんておそがいごと
おりぃだちゃあするわけないろ。
お願いやで、子供だげゃあ返してくりょよ。
犯人:身代金はおいだろ!
古畑:とんでもない!!身代金の受け渡しおいでまうなんて
おそがいごとおりぃだちゃあするわけないろ。
指定の場所にゃまちがいのう置いどいださ。
そやけどなんやな、あんた飛騨の人かな。
言葉でわかるさ。あんた今、飛騨方言いわはったもなあ。
ところで犯人さんへ、あなたは天網(てんもう)恢恢(かいかい)疎にして漏らさずという言葉をご存知ですか。
無意識の言い癖で簡単に出身などがわかってしまうという事ですね。
なお以上は全てフィクションであり、
最近および過去にあったニュースとはなんら関係ありません。