大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 音声学

自由異音 free allophone

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私:今日の話題は自由異音について。異音とは、音の区別の最小単位。そもそもが異音の種類だが、条件異音と自由異音の二種類がある。その音の違いが意味的な違いになるのが条件異音。日本語に於いてカメ亀・サメ鮫、この二語は意味が区別されるから、/k/ と /s/ は条件異音。日本人は /l/ /r/ を区別しないし、アラブ人は /p/ /b/ を区別しない。このような異音は日本語にとって、あるいはアラブ語にとって自由異音という。
君:異音といえば普通は条件異音を示し、自由異音は少ないのでしょ。
私:割り切って考えると条件異音は共通語の異音であり、自由異音は方言の異音。飛騨方言にして然り。
君:なるほど。国語学の下位分類たる方言学における音韻学は、主に言語学の下位分類たる音声学の自由異音の問題という事ね。
私:うん。要はそういう事。
君:具体例がいいわよ。
私:そうだね。各論から入って総論を導く。演繹的な考えというわけだ。具体的には相通(そうつう)の問題だね。
君:音韻学では母音の交替とか、子音の交替などの言葉を使っていたわね。
私:その通り。自由異音の考えそのものだな。要は飛騨人は共通語の音韻を使うが、ついつい飛騨方言の音韻も使うという事。
君:つまり音韻の二刀流が自由異音という事ね。
私:そう、気ままに自由に使っているし、両語とも同じ意味。この辺の自由さが自由異音と言われる所以(ゆえん)だ。
君:では、おしまい。
私:もう少しお話を続けよう。先ほど出てきた相通だが、二分類できるね。
君:そりゃあ、何でも色々な考えで分類できるわよ。勿体ぶらずに結論を書かなきゃ。
私:はいはい。子音+子音で表記される相通と、子音+母音で表記される相通、この二つ。
君:なるほど、前者は子音の交替の相通で母音を巻き込んでいないし、後者は母音を巻き込んだ相通ね。
私:まさにその通り。母音を巻き込むか否かでに分類できる。でもこれって厳密に考えると四分類できるような気がするけれど。つまりは帰納的考え。
君:ヒントは?
私:以前に接辞のお話をしたが、ゼロ接辞の概念をお示しした事がある。これの延長の概念としては、短母音にはゼロ子音が接頭辞としてくっついていると考えれば、まことに話はすっきりするでしょ。
君:なるほど。日本語はアルタイ諸語のモーラ語だから、子音+母音が音の単位、母音もゼロ子音があるとすれば、音韻変換は、子音のみ・母音のみ・子音母音両方、この三つのパターンね。
私:いやいや、子音母音が共に音韻変換しなければ、これはゼロ音韻変換だ。つまり音韻変換しないというパターンもあわせて四つのパターン。
君:そんな事、どこにも書いてないでしょ。
私:多分。
君:という事は。
私:書きながら、今、思いついた。
君:リエゾンとはゼロ子音が他の子音に変化する現象ね。子音の脱落は逆に子音のゼロ子音化というわけね。ほほほ

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