大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 音声学

upstep

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私:upstep は downstep(downdrift) の逆の現象。
君:downstep と downdrift 、これは異なる概念じゃないのかしら。
私:いやいや、似たような概念というか、同じような概念と言ってもいいだろう。若し間違っていたら御免ね。
君:同じような、は同じじゃないものね。
私:うん。世界の言語では圧倒的に downdrift が多い。日本語には upstep は存在しないかと思いきや、Intonational structure of Kumamoto Japanese: a perceptual validation K. Maekawa, The National Language Research Institute, 3-9-14, Nishiga'oka, Kita-ku, Tokyo, 115 Japan. 熊本方言には存在するという論文があった。著者の主張はわからないわけではありません。
君:どんな言語も方言の中にはありそうね。
私:うん、簡単にお浚いしよう。日本語はアルタイ諸語でモーラ語。そしてアクセントに特徴があり、最初の二拍は低高ないし高低が大原則。つまりアクセント核は一拍めか二拍めに必ず現れる。それでも例外はある。
君:例外とは?
私:京都語の高高アクセントだ。「風が」「鳥が」「牛が」など。東京式は「低高高」。この京都式「高高高」アクセントだが upstep だろうね。東京式「低高高」にして然り、二拍目と三拍目のモーラ。要は敷衍すると、中高アクセントの場合は語頭からアクセント核までが upstep 。
君:高高といっても微妙なピッチの差は散在するわね。高高が続けば徐々にピッチが下がるとその先端のアクセント核が困っちゃうわね。
私:要はそういう事。ピッチの違いは高低の何れかで表記するが、実際にはオン・オフのスイッチではなく不連続線、つまりは波。平板アクセントとは頭高アクセントに続くものであり、両者を一つのアクセントととらえると、中高アクセントという事になる。これは語頭のモーラからアクセント核のモーラまでが upstep 、それに続くアクセントは downstep という認識でよいのでは?
君:世界の言語は downdeift が多いけれど、それ以外は upstep 、考えるまでもなく当たり前。 ほほほ

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