大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 心の旅路

ぬしさん(沖縄)

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私:ウチナーヤマトグチに「ぬしさん」というのがある。
君:ウチナーグチとウチナーヤマトグチの違いは?
私:違いは、前者は戦前の琉球方言、後者は戦後の琉球方言。違いはあまりない。もっとも伝統的な琉球方言(ユネスコ指定絶滅危惧言語)は日琉祖語の直系なので、本土の人々には理解が不可能、といってもよいが、戦後の琉球方言は東京語の影響を随分と受けて、我々にもわかりやすくなった。伝統的沖縄方言に対して理解しやすい琉球方言、つまりは「うちなー(沖縄の人々が話す)やまとぐち(東京語)」という意味だね。「ぬしさん」と言えば「主様」の意味だから、説明は要らないよね。
君:ご主人様、旦那様、というような意味ね。
私:そう。「ぬし」は主人の意味の全国共通方言だが、九州に多いね。飛騨にもある。ここだ。沖縄の「ぬしさん」って若しかして「ちゅらさん」からの発想だろうか?
君:「ぬしさん」の「さん」は「様」だし、「ちゅらさん」の語源は「清らさあり」、「清ら」が「チュラ」になり、接尾語(辞)「さ」、そして「あり」が「ン」に音韻変化だから偶然の一致よ。
私:たしかに偶然の一致だが、方言は素朴な物、その原動力は民間語源と誤れる回帰だ。「ハイサイおじさん」は「ねえねえ叔父様」ってな意味だぜ。「おじさん」も「ぬしさん」も沖縄語なんだよ。

君:あら? 今夜の話題は「ぬしさん」だわよ。
私:おっと、そうだった。つまり「19の春」だね。これも沖縄のソウルミュージック。

君:この歌詞の「ぬしさん」って実は「夫」の意味じゃないわね。
私:そう。「夫」の意味ではない。「情夫」の意味だ。つまりは大人の世界。世の中にはこのような形の男女の愛もあるという事。文学の永遠のテーマだ。
君:どういう事?
私:誰にもあるはずだ、片思いで別れた人が。という事で、この歌だが昨晩は家内と話題になった。
君:・・あなた、まさか。
私:ははは、ご心配なく。笑い話だ。
君:どういう事?
私:家内と私の共通の友人が沖縄にいる。彼が大好きな歌、という意味。
君:なあんだ、そんな事だったのね。
私:いや、話はまだ半分。彼がよく歌うものだから、私共夫婦も自然と歌詞を覚えてしまった。ところがなんと・・家内は空耳で歌詞を「むしさん」と勘違いしていたんだ。
君:虫様、さすがにそれはないわね。
私:わけのわからない琉球方言が多いから「むしさん」でも家内は違和感を覚えなかったそうだ。意味が「情夫」という事は理解していたようだ。
君:意味さえ理解できれば、少しの聞き間違いなんかいいわよ。
私:いや、流石に「虫さん」はいけないね。
君:無視できないわね。ほほほ

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