飛騨方言における助詞・助動詞や、といっても多岐ですので
命題が大きすぎるのですが大雑把には以下のようでしょう。
○=弱、●=強。原則としては意味が強調される場合は強アクセントです。
その一、助詞の、や。
★ 格助詞・や 先行する代名詞に引きずられます。
格助詞・が、は飛騨方言では、"や"ないし"ゃ"に変わります。
ところで、飛騨方言では人称代名詞、
指示代名詞が実はすべて、
末語が”り”ないし”りぃ”であり、まさにこの文法が該当するのです
(飛騨方言における代名詞のアクセント)。
しかも、おれ、だれ、の場合は後拍がアクセントのため、必然的に格助詞・や、は
強アクセントになります。例文ですが、
だりゃ○●書いた(誰が書いた)? おりゃ○●書いた(私が書いた)。
わりゃ●○書いた(あなたが書いた)? わりゃ●○書いたが(あなたが書いたのですか)。
★ 副助詞・や 普通強アクセント
なくや●(あ)わらうや●(あ)(泣くやら笑うやら)。
なんや●知らんが(なにやら知らないが)。
★ 係助詞・や 先行する代名詞に引きずられます。
主語の"は"が、飛騨方言では、"や"ないし"ゃ"です。
格助詞・や、と同じように用いられます。
つまり、飛騨方言は、"私は"も"私が"もあまり区別されません。
アクセントは明らかに異なります。
おりゃ○●○佐七です(私は佐七です)。−>実は"り"にアクセント
おりゃ○○●佐七です(私が佐七です)。−>実は"ゃ"にアクセント
★ 終助詞(句の終止であること陳述)・や 普通は弱アクセント
いつもの佐七や○(いつもの佐七です)。
飛騨方言そうんや○(飛騨方言を言うのだ)。
ただし強調の場合は強
いつもの佐七や●。 飛騨方言そうんや●。
★ 接続助詞・や 普通は弱アクセント
いきゃ○ええ(いけばよい)。 せや○ええ(すればよい)。
ただし強調の場合は強
こや●ええ(来ればよい)。
★ 並立助詞・や、やら 常に弱アクセント
山や○川 山や○ら川や○ら
★ 飛騨俚諺接続助詞・やで○●
(句間において両句の認定の仕方を表現)
やで −> おりゃ金槌やで○●泳げん。(私は金槌だから泳げない。)
その二、助動詞の、や
★ 助動詞・や終止形+共通語接続助詞
(句間において両句の認定の仕方を表現)
やから●○○−>最初やから、はいれた。
(最初だから入場できた。)
やが○● −>最初やが、はいれなんだ。
(最初だが入場できなかった。)
やけど●○○−>最初やけど、はいれなんだ。
(最初だけれど入場できなかった。)
やし○● −>最初やし、はいれもした。
(最初だし入場もできた。)
やから●○○、やけど●○○、というのは慣用句といってもいいでしょう。
飛騨方言でも、やから○●●、やけど○●●はそれぞれ共通語と同じく輩、火傷の意味で用いられます。
★ 助動詞・や終止形+飛騨方言接続助詞
(句間において両句の認定の仕方を表現)
やに○● −> 最初やに、はいれなんだ。
(最初なのに入場できなかった。)