飛騨方言に、がで、という言葉があります。
分量、かさ、という意味です。
普段何気なく使用しているこの言葉、例えば、がでがある、といえば分量が多い、かさがある、という意味ですが、
それにしても何故、がで、というのでしょう。
なにぶんにも愛嬌のある響きの言葉なので語源が解ればなお親しみが涌くだろうと
思ってはいました。
結果は別項の佐七辞書・がであるいは
飛騨俚言・がで・がでがある、に関する一考察
にお書きしたとおりです。しかしそれだけではもったいない。
と言う事で筆者が、がでの語源=使いで、を思いつくに至った経過を以下に克明にお伝えしましょう。
まずは、がで、をキーワードにネット検索しました。
幾つかヒットします。
全て飛騨方言にまつわるサイトからの情報発信です。つまりは、がで、は俚言です。
こうなりますとにわかに語源の発見は難しくなります。
つまりは
俚言であるとわかれば古語辞典を見てもだめ、独力で語源を思いつくしかない、
孤独の戦いを覚悟せねばならぬ
という事です。案の定、手元のどの古語辞典にも、がで、の記載はありませんでした。
逆にいいますと
同じ言葉でも
全国各地にあるものは共通の祖先語、つまりは古語から発生した言葉、時には古語そのもの、に
違いありませんので市販の古語辞典を幾つか当たれば語源が見つかる事が多いのです。
何よりも、必ず古語辞典に答えがあるはずだという安心感、あるいは都合よい場合には、
全国からのネット発信で既に語源について解説してあるものがヒットする事もあるでしょう。
次いで、品詞の同定です。がでがあるとか無いとか言うので
品詞は体言・名詞に決まっています。しかもエ列で終わる名詞です。
すかさず考えねばならぬ事は、下一段動詞の連用形が転じて名詞となったものか検証する事です。
例えば、教えという名詞は、動詞の教えるからきています。
然しながら、がず、げず、などという動詞は無いし、
あるいは、〜がず、〜げず、あるいは、〜がす、〜かす、等々、下一段動詞を考えてみました。
が何れも該当無しでした。
さて意味が、かさ、なので、かさ=>がで、というように音便変化、語変化したのか
考えてみました。
英語で native tongue といいますものね。ひたすら自分自身の舌を信じて、
ぶつぶつと唱えてみる事ですね。
飛騨方言によくある音便変化、連母音融合、等々を順次検証してみます。
が何れも該当無しでした。
さて、がで、のアクセントですが○●です。
幾らなんでも強アクセントのある部分は昔から変化しなかっただろうと
考える事です。
広辞苑をみました。で、の所に、で(出、分量、かさ、文例:出のある料理)が
目に飛び込みました。
ここですかさず、これかも!と閃くわけです。
突破口の発見です。
再びネット検索に入ります。キーワードを、でがある、あるいは、でがない、
この二つにして、一体全体、日本語表現としてどれだけのネット文字情報があるのか調査するのです。
〜思い出がある、など明らかに同音異義語
(でもないかな、よくよく考えると同意語?思わずにんまり!)
である言い回しもヒットしますが、ほどなく同意語のオンパレード、
食べ出がある、飲み出がある、書き出がある、等々がヒットして遂には
使いでがある、に当たります。
ここですかさず、これかも!と閃くわけです。
答えを直感するわけですね。
再びアクセントおよび音便変化、語変化の検証に戻ります。
裏づけを考えるのです。
さて、使いで、がで、の両語とも末語・で、にアクセントがあります。
これに意を得て、またもちろんの事ひたすら自分自身の舌を信じて、
ぶつぶつと唱えてみる事ですね。ということで・・・・
使いで=>つがいで=>がいで=>がで
何ら問題ありません。
ああ、自分の言葉だ、郷土の言葉だ、舌が自然に動く。
この間数十秒でした。
これに間違いない!と叫ぶわけです。
そしてじいーんと湧き出る感激。
当サイトにうきうきと鼻歌まじりにこの事を書き既に数ヶ月以上たっていますが、感激はまだ続いています。
おそらく生涯続くでしょう。
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