別稿に飛騨方言・かかれの語源について
近隣県の同意語からの推察、
下一段動詞欠けるの命令形
を記載しています。
本稿ではまた別の語源説を記載し、ひとつの見方をお示しします。
さて、かかれ、という音でピンとくるのは、やはり、かく+あれ、ですね。
共通語でも例えば、斯かるほどに、斯かれば、斯かれど、等々の
言い回しがあり、古語辞典の文例は幾つもあります。
奈良時代からの日本語である、とひとこと書き足せば十分です。
ただし、飛騨方言の、かかれ、は、斯くあれ、と全く正反対の意味です。
賢明な読者にはお伝えしなくても良い事なのですがあえて、
飛騨方言・かかれ、の意味は、斯くあらざるべき事、です。
例えば、かかれにやりゃあええ、とは、キチンと正しくしなくてもいい、
大雑把にやってだいたいあっていれば良い、という意味です。
さて、共通語で風呂の湯加減はなかなかいい加減だ、といえばどんな意味でしょう。
のくとまる(=あったまる、飛騨方言)のに丁度いい温度であるという意味である
事は書かずもがな、つまりは、文字が意味とあっています。一方、
佐七のやりかたぁええかげんや、といえばどんな意味でしょう。
佐七の方法は、ずさんで、つまり悪い加減だ、という意味です。
この文章では、ええかげん、の意味は実は、悪い加減、です。うふふ。
要は逆説的な言い方です。ほめ殺しです。いやみな言い方、という事です。
やはり話法としては重要ですね。
例えば、娘がたまたま机に向かっている。いやあ勉強しているなあ、えらいぞう、
と父親は娘に言いますが、その本心はやっと少しは勉強する気持ちになったか、という
事ですね。つまりはこれが毎日の言葉になってしまうと、机に向かう、という事は、
実は、たまたまチョイと机に向かっただけ実は勉強していない、という意味で
使われるようになるのです。
実は以上が前置きです。いよいよ佐七節です。
多分ですが、元々は、
いやあっ"カカレ"にやってござる (=いやはや、斯くあるべき様にやっていらっしゃる)
というような用法で、つまり、かかれと言う言葉は良い意味で用いられていたのでしょう。
それがいつのまにか次第に、馬鹿丁寧にやっていらっしゃる、というほめ殺し言葉に
なってしまった瞬間に、良い言葉・かかれ、は、馬鹿丁寧にしなくてもよいのに、という悪い言葉・かかれ、になったとさ。しゃみしゃっきり。
おまけ 佐七は、斯く+あれ、が本当の語源では無いかと
考えています。アクセントがあっているからです。この点では
他の二説はアウトです。
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