別稿に
まわしの語源、
まわしの用法
について記載しました。
実は筆者としてはどうしても気になる点がひとつあり、
お披露目しましょう。
気になるのは同語の語源です。
根回しは戦後の言葉であり、まわしの語源では
なかろうと前述しておきながら追加の記載です。
さて二つの資料、
東條操編、標準語引分類方言辞典、東京堂出版、三十版、昭和29年、及び、
北飛騨の方言、荒垣秀雄著、国書刊行会、昭和50年、が筆者の手元にあります。
後者は戦前における旧吉城郡の言葉約三千を記載しています。
両者とも飛騨方言の研究に欠かせない第一級資料と言えましょう。
実は両資料に準備の意味のまわしという語が記載されていないのです。
用言・まわす、も記載されていません。
否、実はお相撲さんのまわしが実は両資料に記載されていました。
また不肖佐七サイトに紹介しています凡そ三十〜四十の飛騨方言のサイトの
約半数にも、体言・まわし、は記載されていません。
尤も、戦後まもなくの生まれの筆者が幼い頃に
既に知っていた言葉ですから、戦前から
旧高山及び近郊では、まわし、が使用されていたのでしょう。
がしかし、荒垣秀雄著を信ずる限りは戦前に於いては飛騨地方でも北部では
やはり話されなかった言葉なのでしょうか。
つまりは、まわしは名古屋方言として熱烈なる人気の言葉であるにせよ、
その影響はせいぜい南飛騨から高山あたりまで。
また東條操辞書を信ずる限りは戦前に無かった言葉・まわし。
つまりは戦後に根回しという言葉から出てきたのかもと考えても、
まんざら荒唐無稽とも言えない、というのが結論です。
勿論、筆者は素直に古語辞典の記載を信じ、安土桃山時代から
飛騨の南半分で、まわし、が話されていたのでは、と推察します。
p.s. 方言に関する古書入手が日々、難しくなって
来ているようです。
限られた資料からは誤った結論が出やすいので、
気をつけなければいけませんね。
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