大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

とちかんじゅ

戻る

私:昨晩は釣り糸の事を飛騨方言、というよりは大西村言葉、で「てんす」という事と、角川古語辞典に「てぐす天蚕糸」の記載があり、これが語源である事をお話しした。
君:釣具店でほとんど全ての商品名に「テグス」という片仮名表記であることも実は間違い、という事もお書きになったわよね。
私:釣り糸といえばナイロン糸に決まっているからなあ、カタカナ表記の事は実はどうでもいいよ。「テグスサン(学名:Eriogyna pyretorum)」、和名が「やままゆが山繭蛾」について付け加えたい事がある。
君:飛騨方言では「とちかんじょ橡官女」ね。突然に思い出したのね。
私:実は子供の頃、村では平板アクセントで「とちかんじゅ」と呼んでいた。方言の言い回しである事位は子供心に気づいていたが、語源など知る由も無い。実は当サイト発足当初に記事を書いている。ここ
君:語源は「橡官女」ではないのでは、とおっしゃりたいのね。
私:簡単に結論付けるとそういう事になる。はっきりしている事だけをお書きしよう。大西村では「とちかんじゅ」。土田吉左衛門「飛騨のことば」には「とちかんじょ橡官女」の記載。おそらくは
・・張箍の女袴を穿いた官女よ、橡の木よ、三葉形の縫を置いて、鳥の羽根の飾をした上衣を曳ずる官女よ、大柄で權高で、無益の美形。牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)・・
あたりを参考になさって土田先生は橡官女とお書きになったのだろうか。ただしあれこれ調べものをしても中央の言葉として「橡官女」の言葉が見つからない。浅学菲才である事を実感する。ただし大西村では音韻が変化した事については説明が容易だ。わかるよね。
君:それはあなた達・村の子供達が話した言葉だから。
私:その通り。カタツムリの方言量が多いのと同じ理屈。動物名、子供の遊び、等々は方言量が多い事がわかっている。もう一点、大切な事がある。
君:ほほほ、わかるわよ。村の子供達に上田敏は関係ないわ。
私:その通り。方言は書き言葉ではなく、話し言葉であるという事。人から人へ言い伝えられるうちにドンドン音韻が変化していく。だから「とちかんじょ」から「とちかんじゅ」へ音韻変化したのは間違いなさそうだ。
君:でも平凡なお話ね。わざわざ書かねばならないほどの事かしら。
私:ふふふ、ひっかかったぞ。どうしても書いておかねばならぬ事がある。
君:えっ、ひっかけ?・・ほほほ、わかったわ、アクセントね。
私:その通り。
君:官女は頭高。三人官女のアクセント核も「か」だわね。
私:アクセント学的に表現すると「三人」は漢字一字の漢字助数詞と単純数詞の癒合語。更にのこの癒合語と単純語「かんじょ官女」の結合語が「三人官女」、癒合語は平板化して単純語に接合し、単純語のアクセント核は変化しない。
君:要は、日本人なら誰もが知っている、自然に話すアクセントを難しく表現しているだけね。
私:まあ、何とでも言ってくれ。確かに村の子供達にとって上田敏は関係ないが、それでもアクセントが変化する事は流石に有り得ないだろう。「怪獣」ならアクセント学的にはピッタリなんだよ。ぶっ
君:それこそ平凡なお話よ。あるかもしれない、ないかもしれない。男の子は怪獣が好きだから勝手にアクセントを変えてしまったのよ。ほほほ

ページ先頭に戻る