大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
にわらかす(=にぎわす) |
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私:自ハ四・にぎはふ賑、が飛騨方言ではラ行動詞「にわる」になる事をお話しした。「にわう」ともいう。音韻変化としては、にぎはふ>にぎわう>にわう>にわる、と考えざるを得ないので、「にわる」が飛騨方言の最新の進化形という事も丸わかりだね。 君:最新はどうかしら。飛騨でも寧ろ死語に近く、戦前辺りの飛騨方言じゃないかしらね。 私:まあそんなところだが、今夜は更に「にわる」に日本語文法の造語機能が働いているという話題だ。 君:動詞の自他対の問題ね。「にわる」が自動詞で、「にわらかす」が他動詞。 私:その通り。自動詞が最初に生まれ、これが他動詞化したものが「にわらかす」だから、「にわる」よりも「にわらかす」がより新しい言葉だ。 君:同じ時期に生まれた自他対じゃないかしら。 私:確かにその可能性はある。ただし、「にわらかす」から「にわる」が生まれる事は有り得ない。 君:つまりは「にぎわす」から「にわらかす」が生まれる事はない、と仰りたいのね。 私:その通り。「にぎわす」はそもそもが他動詞なので、これに更に他動詞化の接尾語「かす」を接続させる必要は無いんだよ。自動詞「うごく」が生まれた後に他動詞「うごかす」が生まれた。これが日本語の歴史。(飛騨方言)動詞の自他に関する一考察などもご参考までに。 君:「にわらかす」は正に飛騨の俚言なのよね。 私:勿論だ。全国広しと言えども、飛騨地方の人の間でしか通じない。土田吉左衛門「飛騨のことば」に文例がある。あいつは面白い事を言って中々にわらかす人や。 君:意味は、あの人は面白い事を言って周囲をにぎやかにさせるお方です。つまり、爆笑の渦にさせる人です、の意味ね。 私:そうなんだよ。でも・・・ふふふ、もっと面白い事が。 君:えっ、なあに。 私:「にわらかす」を入力したら、ついうっかり漢字変換させてしまった結果が「に笑かす」。言い得て妙。 君:なるほどね。共通語の自他対は「わらう・わらわせる(わらわす)」だけれど、「わらわせる(わらわす)」の意味で「わらわかす」という地方があるのね。 私:あるある。全国共通方言だ。詳細は省く。古語辞典にも「わらわかす」がある。宇治拾遺(鎌倉)や江戸の人情もの。つまりは中世から近世の中央語。 君:笑わせる話ね。当サイトは今日も言葉の語源の話で、皆様をにぎわしたのね。ほほほ |
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