大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法

連体詞よ、さようなら

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私:昨晩はサ行イ音便のお話をしたが、アクセントによって同音異義語の混同が回避できそうだ、という事は予想はできるが果たしてそうか、飛騨方言のアクセントを内省して愕然というお話だった。今までほとんど無頓着だった。このような飛騨方言の特異なアクセント体系は既に鏡味明克先生が報告していらっしゃる事も昨晩に知った。
君:それで今日はどうして連体詞のお話なの?
私:うん、時間もあるしNHKのアクセント辞典をペラペラとめくって調べものを始めた。用言については活用毎のアクセントが表記されているので、大変に親切な内容だ。
君:それで。
私:「おおきい」と「おおきな」の二つの記載があって、一瞬考え込んだが、ああそうだ連体詞というのを中学あたりで習ったな、と思い出したんだよ。
君:「おおきい」は形容詞で、「おおきな」は連体詞ね。
私:うん、でも、これって普通に考えて見ておかしいだろ。どうして「おおきい」も「おおきな」も共に形容詞ではいけないんだい。それに「白い」とは言うが「白な」とは言わない。どうしてなんだろう。でも「真っ白な」とは言うよね。小学生の質問のような内容で恐縮だが、君ならこの小中学生の素朴な疑問にどう答える?
君:学習指導要領というものがあるから、それ以外の考えを教えてはいけないのよ。
私:まあね。教員には教員の立場というものがある。要は文語文法を教えず、戦後に突然に突貫工事で作った中等文法、いわゆる学校文法、の限界というものだね。方言をかじりだして文語文法に夢中になっているが、明治の文明開化以降、近代的な国語学という学問が生まれ、国学から国語学へと大きな舵取りがあった。山田文法、時枝文法、橋本文法、松下文法と言われる四大文法学説、山田・時枝・松下文法を無視するがごとく出来たのが戦後の橋本流中等文法。功罪については二編、書いた。ここここ
君:ほほほ、わかるわよ。あなたは連体詞という言葉も形容動詞という言葉も大嫌い、でしょ。
私:正にその通り。そもそもは日本語は文語文法を基に成り立っている。連体詞も形容動詞も要は用言の語尾変化の一種だ。山田文法と時枝文法は連体詞も形容動詞もその存在を認めない。というか、明治になり文語文法の流れを汲む山田文法が生まれた。後からやってきた橋本文法。かってに連体詞と形容動詞という言葉をでっち上げ、戦後の学校文法に押し付けた、と言い換える事ができる。かなりドギツイ表現でゴメンネ。当サイトは分かりやすさをモットーとしている。
内容山田文法時枝文法
自立語・付属語観念語と関係語詞と辞
この・その代名詞代名詞
こう・そう副詞副詞的代名詞
動詞用言全般用言全般
カリ活用形容詞動詞扱い動詞扱い
指定の「だ」存在詞動詞扱い
形容動詞動詞扱い動詞扱い
形容動詞の存在認めない認めない
副詞副詞・接続詞・感動詞の総称連用修飾語
連体詞認めない認めない
助動詞複語尾
助詞関係語

君:では連体詞「おおきな」について説明をお願いね。
私:うん。語源は「おほきなり」という用言。これの連体形は「おほきなる」、つまりは「おほきなる時計」から「おじいさんの大きな古時計」の言葉になった。「る」が省略されて「おほきな」と言う修飾語が生まれたのが中世、そして近世語を経て近代語・現代語となる。「おほき」は従って体言だ。形容詞「おほし多」の連用形にて体言になった事も書かずもがな。つまりは「おおきな」の語源は「おほき(こと)にある」という存在動詞「あり有」つまり用言の連体形という意味。形ク「おほきい」は「おほき」に接尾語(辞)「い」がついて形容詞化したもの。「おおきい・おおきな」共に語幹が「おほき」である事は変わりがない。「おほきなる」は「おおきな」という形容詞に品詞の転成をした。「おほき」という体言は「おおきい」という言葉が生まれた瞬間に、これもまた形容詞に品詞の転成をした。かくして「おおきい・おおきな」という二つの連体形の形容詞となった。それだけの事。だから口語文法の活用は明らかにおかしいと思う。小中学生が疑問に思うのは当然の事。「おおきな」は連体詞という戦後に突然に出来た品詞というよりは戦前からあった形容詞連体形のひとつでしょ。
君:確かに形動ナリ・タリも「にあり・とあり」だから、連体詞と同じで「あり有り」という用言が実は隠れているという事よね。
私:このサイトは教育系でも受験系でもないので、好き勝手に書きたい事は書かせていただこう。
君:「真っ白な」と「白い」はどう?
私:単なる慣れの問題でしょ。確かに「白な」とはあまり言わないね。でも、「真っ白い」とは言う。「白な」で意味が通じないかと言えば、そんな事は無いと思う。「黄色い」と言い出したのは明治になってから。江戸時代までは「黄な」。興味ある人はここへどうぞ。
君:あなたは結構、頑固なところがあるから、今後は連体詞・形容動詞の単語を使う事はなさそうね。ほほほ

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