飛騨方言が四段活用である理由をふたつ、
(1)上古の推量の助動詞・む、は
撥音便・ん、に留まり、
また、(2)もうひとつの推量表現・〜むとすも、の
発展形・〜ずも・〜ず、が生まれて、
その結果、助動詞特殊型・う、が
生じなかった為である事をお書きしました。
一言で言えば、行こう、という意味で、
行かん、あるいは、行かず、と言うのが飛騨方言です。
といっても近世までの事、現代は廃れた言い方でしょう。
ところで、
百万人といえども、われ行かん。
という文語調ですが、まさに四段活用ですね。
ただし、否定の助動詞・ぬ、の撥音便・ん、との
意味の混同を嫌って中央では、いかう、から、連母音融合・いこう、
が発生して五段化したのでした。
ところで中央では、推量表現・〜むとすも、
も近世において消滅したのでした。
否定の助動詞・ず、との意味の混同を嫌ったのですね。
共通語 飛騨方言
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行かん。 否定 推量ないし否定
行かぬ。 否定 否定
行かんので 否定 否定
行かんなら 否定の推量 否定の推量
行かず。 否定 推量ないし否定
行かずに 否定 否定
行かずと 否定 推量
思った
行かずも 存在せず 推量
行こう 推量 存在せず
共通語の言い回しはスッキリしているとも言えますが、
飛騨方言とて、この表のように
否定と推量の使い分けは十分に可能です。