大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 動詞

四段活用と五段活用(3)

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飛騨方言が四段活用である理由をふたつ、 (1)上古の推量の助動詞・む、は 撥音便・ん、に留まり、 また、(2)もうひとつの推量表現・〜むとすも、の 発展形・〜ずも・〜ず、が生まれて、 その結果、助動詞特殊型・う、が 生じなかった為である事をお書きしました。

一言で言えば、行こう、という意味で、 行かん、あるいは、行かず、と言うのが飛騨方言です。 といっても近世までの事、現代は廃れた言い方でしょう。 ところで、
百万人といえども、われ行かん。
という文語調ですが、まさに四段活用ですね。 ただし、否定の助動詞・ぬ、の撥音便・ん、との 意味の混同を嫌って中央では、いかう、から、連母音融合・いこう、 が発生して五段化したのでした。

ところで中央では、推量表現・〜むとすも、 も近世において消滅したのでした。 否定の助動詞・ず、との意味の混同を嫌ったのですね。
       共通語   飛騨方言
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 行かん。  否定    推量ないし否定
 行かぬ。  否定    否定
 行かんので 否定    否定
 行かんなら 否定の推量 否定の推量
 行かず。  否定    推量ないし否定
 行かずに  否定    否定
 行かずと  否定    推量
  思った
 行かずも  存在せず  推量
 行こう   推量    存在せず
共通語の言い回しはスッキリしているとも言えますが、 飛騨方言とて、この表のように 否定と推量の使い分けは十分に可能です。

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